ウクライナ危機は世界的危機となるか?

2014.3.1


 ロシア軍がクリミア半島を支配下に置いたとの情報です。すでに、この危機が発端となって、第3次世界大戦が始まると騒いでいるメディアもあるようです。

 騒ぐ前に、情勢をよく検討することです。いつものように、Google Earthを使って説明します。kmzファイルをダウンロードして、Google Earthで開くと、それぞれの場所が分かります。

 気になるのは、ロシア軍がクリミア半島のどこで境界線を引いたかです。

 ロシア軍にとって、黒海艦隊の母港、セバストポリ(kmzファイルはこちら)を維持するのは必須条件です。西欧寄りの反政府派がウクライナを支配すると、黒海艦隊すべてがウクライナに渡ってしまう危険性があります。そのためには、クリミア半島全体を支配していることが理想です。軍港がすぐに攻撃されることを避けるためには、陸軍兵器の直接照準下にならないほど、距離的に余裕をもって、クリミア半島北部に境界線を引きたいところです。さらに、境界線を防衛する地上軍を支援するための補給路が必要です。ロシア領土からつながる幹線道路がいるということです。二つのルートが候補に挙がります。

 まず、タガンログ(kmzファイルはこちら)からの北方ルート。ここには大型船が停泊できる港があり、空軍基地もあります。ここからウクライナのメリトポリ(kmzファイルはこちら)へつながる道路を押さえていれば、クリミア半島防衛隊は万全です。海路でセバストポリへ運ぶか、メリトポリ経由で陸路で運べます。問題は、メリトポリがやや内陸寄りにあり、防衛する場所が広がってしまうことです。さらに南のアルミャンスク(kmzファイルはこちら)の緯度付近に防衛線を引いた方が、大きな湖が多く、防衛拠点が限られるので、より少ない兵力で半島を防衛できます。メリトポリを防衛することは、余計な戦力が必要であるだけでなく、戦いをエスカレートさせる危険があります。

 南方ルートは、クラスノダール(kmzファイルはこちら)辺りを拠点として、アゾフ海の狭い海峡を通って、クリミア半島に向かいます。陸地は約4.5kmの海峡で分断されていますが、橋を用いない輸送路が設けられています。カフカズ港に列車をそのまま積み込める船と港のシステムがあり、積み替えなしで、大量輸送できる仕組みが設けられているのです(kmzファイルはこちら)。列車は荷物を積んだまま、線路を通じて船の上へ進入し、そのまま船で対岸へ移動し、逆の要領で線路上に戻されるのです。

 常識的には、北方ルートは避け、南方ルートにする方が有利です。紛争は小さい方が、西欧諸国からの風当たりが弱くて済み、より小さな武力行使で成果をあげられる可能性があります。ロシアがどちらを選択したかは、派遣兵力から推測できます。兵員6,000人と装甲車約30台との報道がありますから、南方ルートだろうと判断できます。メリトポリと幹線道路を守るには、もっと多くの兵力が必要です。この増派自体が、南方ルートである可能性も十分にあります。

 ロシアが南方ルートを選んでいたら、この紛争はより小さいものとなり、世界戦争になることはないかも知れません。北方ルートだと、その度合いは強くなります。まだ、ロシア軍の配備について、詳細が報じられていないようです。まず、ロシアがどちらのルートでクリミア半島に入ったのかを確認しなければなりません。それをしないで、世界的危機を主張する意見に賛同するのは危険です。


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