米露外相会談からウクライナ危機を予測する

2014.3.15


 BBCが米露外相のロンドン会談について報じました。

 セルゲイ・ラブロフ外務大臣(Sergei Lavrov)は、ジョン・ケリー国務長官(John Kerry)との会談を建設的だったと言いました。ケリー長官は、アメリカはウクライナ国境とクリミア半島へロシアが派兵したことに深く懸念を抱くと言いました。ラブロフ大臣は、ロシア政府は日曜日のクリミア半島でのロシア帰属に関する住民投票の結果を尊重すると言いましたが、ケリー長官はアメリカはそれを認めないと言いました。

 6時間の会談の後、ラブロフ大臣は記者に、ロシアはウクライナ南東部を侵略する計画がないと言いました。ロシアはクリミア半島の人たちを尊重すると、彼は言いました。

 会談が直接的で率直なものだったと表現したケリー長官は、アメリカはウクライナでの合法的な利益を認めると言いました。彼は、アメリカはクリミア半島での非合法の住民投票に関する態度は変えず、その結果を認めないと言いました。しかし、ラブロフ大臣はウラジミール・プーチン大統領(President Vladimir Putin)は投票が終わるまでは、いかなる決定も下す用意はできていないことを明らかにしたと言いました。ケリー長官は、ロシアが別の道を見つけなければ、重大な結果があるだろうとラブロフ大臣に言いました。

 国連安全保障理事会は、住民投票の結果を国際社会が無視するとしたアメリカの草案を採決します。BBCの国連担当記者、ニック・ブライアント(Nick Bryant)は、西欧諸国はロシアが控えめな言葉で書かれた決議を拒否権を使って阻止すると予想します。彼らは中国がロシア政府の外交的孤立を示すために、決議を支持するか、少なくとも棄権することを望んでいます。


 記事は一部を紹介しました。

 この会談で、米露が慎重に大戦争への発展を避けようとしていることが分かります。

 ラブロフ大臣が、ロシアはウクライナ南東部を侵略する計画がないと言ったことは、まずロシアが大規模な戦争を予定していないことを明らかにして、国際社会での立場を悪くしすぎないようにするための工夫です。「クリミア半島の人たちを尊重する」と言ったのも、ロシアへの帰属を求める人たちだけでなく、その反対の人たちにも配慮し、かつてのように、一方的に支配下に置いたりはしないということの表明です。これは西欧社会が考える「レッドライン」で、ロシアがそれを認めないと、西欧社会の行動はさらに厳しいものとなります。プーチン大統領が住民投票が終わるまでは、何も決めないというのは、対外的な主張であり、すでにどうするかは決めています。ロシア人保護を理由に、当面、ロシア軍を駐留させ、ロシア帰属を既成事実化するのです。

 西欧社会はロシアに経済制裁を課して、その行動を戒めるのであり、直ちに軍事介入しようとはしません。

 安保理決議で中国がどういう態度を取っても、草案はロシア一国の反対で否決されます。しかし、ロシアの孤立を演出するには、中国の賛成が必要です。

 月曜日までには、大きな戦争にはならないという認識が広がり、株式市場は平静を取り戻すかも知れません。

 日本政府は、これが北方領土問題に与える影響について気が付いているでしょうか。この地合で、ロシアが四島返還に応じるのは難しいでしょう。クリミア半島を帰属させ、北方領土は返すと、問題を切り分けて考えられるようになるには、かなりの時間がかかります。


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