衛藤首相補佐官がアメリカを批判

2014.2.20


 毎日新聞によると、衛藤晟一首相補佐官が動画サイト「ユーチューブ」に投稿した国政報告で、昨年12月26日の安倍晋三首相の靖国神社参拝に「失望」声明を発表した米政府を批判していることが18日、分かりました。

 衛藤氏は投稿で、自身が昨年11月20日に訪米し、国務省のラッセル次官補やアーミテージ元国務副長官らと会談した際、「首相はいずれ参拝する。ぜひ理解をお願いしたい」と伝えたことを紹介。12月初旬には在日米大使館にも出向いて「(参拝時には)できれば賛意を表明してほしいが、無理なら反対はしないでほしい」と要請したことを明らかにした。いずれも米側からは慎重な対応を求められました。

 そのうえで、中国による東シナ海上空の防空識別圏設定を挙げ、「(日本が)いくら抑制的に努力しても、中国の膨張政策はやむことはない。ぎりぎりの中での首相の決断があった」と強調。「同盟関係の日本をなぜこんなに大事にしないのか」と米政府への不満を語りました。


 記事は一部を紹介しました。

 安倍政権が周辺国との関係を悪くする政権であることは、以前に指摘したとおりです。安倍政権のキャッチコピーは「日本をとりもどす」ですが、そのために「アメリカを失う」ことになるのかも知れません。それにしても、予想通りの展開すぎて、驚かされます。

 衛藤補佐官は、アメリカが中国にものを言えないと批判します。これは、アメリカ人の日本人に対する認識を理解していない発言としか思えません。

 2008年に元空幕長田母神俊雄氏が書いた小論文について、military.comの掲示板で、米軍の軍人たちに感想を問うたところ、激しい反感を買ってしまったことがありました(過去の記事はこちら)。現在の民主的な日本はともかくも、中国侵略後の日本について、アメリカ人は厳しい見方をしています。それはすでに確立された見解であり、撤回することは不可能です。太平洋上の激戦の記録と共に、米国民の心の奥深くに刻み込まれているからです。衛藤氏の努力程度では、何の足しにもならないどころか、やぶ蛇にしかなりません。

 中国が東シナ海上空に防空識別圏を設定したことについても、明らかに虚言を用いています。前に書いたように、中国は防空識別圏について3年前に非公式会議で日本に打診していました。当時は民主党政権だったとは言え、自民党もこのことは知っていたはずです。「ぎりぎりの中での首相の決断があった」はずはありません。こうした瀬戸際を強調し、聞き手の判断を奪い、自分の主張に同意させるようなやり方は感心しません。

 アメリカが東シナ海の防空識別圏を警戒するのは、南シナ海に某区識別圏を設定されることを恐れるからです。ここが中国軍の制空権内に収まると、米軍のアジアから中東への展開に支障が出ます。何でも賛成してもらえると考える方がおかしいと言うべきでしょう。


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