集団的自衛権は集団的自衛義務か?

2014.2.17


 権利と義務は相反する概念です。しかし、集団的自衛権の議論では、なぜか同じ意味で使われています。

 ずっと違和感を感じてきた安倍政権の主張のおかしさの理由が、やっと分かりました。「集団的自衛権」は文字通り「権利」の概念です。しかし、政府は「義務」の話をしているのです。

 朝日新聞によると、安倍総理は今月10日、民主党の岡田克也氏の質問に答え、「北朝鮮が米国を攻撃した際、北朝鮮に武器弾薬が運ばれているのを阻止できるのに、阻止しなくていいのか」「将来、技術的に可能となった場合、グアム、ハワイに向かっていくミサイルを撃ち落とす能力があるのに、撃ち落とすことができないのか」と答えました。

 どちらも「義務」の話であり、「権利」の話ではないように聞こえます。2番目の意見は、可能・不可能の話のように読めますが、本質は「撃ち落とさなくてよいのか」という意味です。

 つまり、安倍総理が説明したのは「集団的自衛権」ではなく「集団的自衛義務」というべき概念です。

 国際法上、集団的自衛権は権利なので、行使するかどうかは当事国の判断とされています。国益などの観点から、権利を行使するかどうかが判断されると考えるべきなのです。それを安倍政権は、行使しなければいけないのだと説いているわけです。

 安倍総理は海江田万里氏への答弁で、「(行使)できないということの中で日米同盟が危うくなる」と言いました。これが国益にかなう要点であり、だから集団的自衛権を行使できるのだ、と安倍総理は言いたいのかも知れません。しかし、議論の中で、日米同盟がどう壊れるのか、どんな時にそうなるのかという話は一切出てきません。やはり、アメリカが攻撃されたら日本が代理で反撃することを義務化したいのだとしか思えません。

 一般的に、集団的自衛権の行使には、攻撃を受けた国から、当事国に対して支援の要請がなければならないとされています。つまり、日本の場合、アメリカから日本に対して、外交ルートで支援を求めてくる必要があるのです。政府の説明の中で、そんな話は一切出ていません。アメリカが攻撃されたら、日本が独自の判断で反撃を始めるといった説明しかありません。

 集団的自衛権は、政府が言うような万全の権利でもありません。行使したら国連に報告する必要があります。国連憲章第51条には、次のような規定があります。

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

 集団的自衛権は条約を結ぶことで義務化できるとされます。日米安全保障条約には、次のような規定が含まれます。

第三条

 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。

第五条:
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執ったすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従って直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執ったときは、終止しなければならない。

 第三条に「憲法上の規定に従うことを条件として」とあるので、日本は積極的な武力行使は禁じられているのです。そこで憲法改正が必要になる訳ですが、先日、安倍総理は国会で、憲法解釈がなくても、政権が選挙で責任を取ればよいのだと発言し、自民党内部からも批判を浴びました。

 それでも世論調査では、半数の人が集団的自衛権を認めることに賛成していると言います。しかし、憲法改正が必要だと考える人も半数を超えています。安倍政権の支持率も高いことから、国民投票が実現化する可能性もあります。国民投票が行われ、結局は集団的自衛権が認められる可能性が高いというわけです。

 いずれ、日本は「義務的」に、戦争に参加することになります。誰もそんな覚悟はできていないのに、そうなるわけです。本当に馬鹿げた国になったものです。


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