映画『Unbroken』 レッテル張りの愚

2014.12.16


 最近、ソーシャルメディアで、アンジェリーナ・ジョリー監督の『Unbroken』が話題になっていることを知りました。

 この映画の原作はベルリン五輪の陸上競技に出場し、第2次世界大戦で日本軍の捕虜となる数奇な人生を送ったたルイス・ザンペリーニ氏の伝記(著者ローラ・ヒレンブランド)です。批判する人たちは、例によって、この原作本と映画が日本叩きのために制作されており、嘘で埋め尽くされていると主張します。中にはジョリーが韓国系の血を引いているとか、中国人の養子がいるとか、事実と異なることを言うものもいます。

 そこで、捕虜になる辺りからボチボチ読んでいるのですが、とりあえず興味深い記述を見つけました。第18章「A Dead Body Breathing」(iBook版ではp363〜364)から、その部分を簡単に要約します。

ルイスが独房から引き出され、尋問のために将校用宿舎へ連れて行かれたときに、建物から退出したアジア風の女性2人を通り過ぎました。ルイスを尋問した日本軍将校は、アメリカ兵はどのように性欲を満足させるのかとルイスに尋ねました。ルイスは自分の意志に頼ると答えました。将校は面白がり、日本軍では女を兵に提供すると言い、大勢の中国、韓国、インドネシア、フィリピンの女性を誘拐して、性の奴隷にしたことをほのめかしました。ルイスは外の女性のことを考えました。

 文面からすると、日本軍将校は「女を兵に提供する」とだけ言い、その後の部分は著者の見解と考えられます。なので、誘拐・性の奴隷にしたという部分はザンペリーニが直接話したものではないのでしょう。また、目撃した女性が慰安婦かどうかも判然としません。

 かつて日本は慰安婦の存在自体を否定していました。現在は強制があったかどうかが争点となっています。最近、朝日新聞がこの件で問題を起こしましたが、私は強制があった可能性は十分にあると考えます。外地から外国人男性を労働力として各地へ運び、過酷な労働をさせていた事実が確認されています。女性を徴用する際に、強制がまったくなかったと考えることは、むしろ不自然です。

 まだ読み進んではいないものの、この本には日本軍が捕虜を食べたと書いてあるようです。小笠原事件のように、陸海軍将校が捕虜のアメリカ人パイロット8人の肝臓を食べたことがあります。他の戦線でも類似した事件が報告されていることから、食人が存在したことは否定できません。他の戦争でも似た事件は起きていることから、戦争という異常事態で起きることと考えるべきです。

 現在の感覚では信じられないことも、戦中は起きることがあるのです。ちょっと変だと感じても、まずは確認してみることです。

 


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