北朝鮮が潜水艦用ミサイルシステムを開発中か

2014.10.31


 38north.orgによれば、北朝鮮が潜水艦から弾道ミサイルを打ち上げる能力を開発中です。商用衛星写真は北朝鮮の新浦市の南造船所(kmzファイルはこちら)で、潜水艦から弾道ミサイルを発射する可能性や艦船から弾道ミサイルを垂直発射する能力を探るための新しい試験台を確認しました。

 新しい施設は、発射チューブからミサイルを放出するプロセスだけでなく、潜水艦と水上戦闘艦、ミサイル自体との互換性を判断する研究、開発、試験に使うために適切な大きさと設計です。

 北朝鮮がそうした能力を追求すると決めた場合、潜水艦から発射する弾道ミサイルを開発して、配備するために何年もかかるでしょう。

 弾道ミサイルを搭載する潜水艦の開発は北朝鮮に生存可能な第二弾核攻撃能力を提供する一方、平壌が核装備した潜水艦を、戦時には、ほとんど指導層とのコミュニケーションが切れた潜水艦の艦長に委託することも意味します。

 正確にミサイルシステムが何に利用されるかは、現時点ではまったくの推論です。

 ムスダンやノドンの海軍版のような大型液体燃料式を使えば、北朝鮮の能力が限界まで伸ばされます。

 液体燃料式のスカッド、KN-02やまったく新しいシステムの固形燃料式短距離弾道ミサイルは技術的挑戦は少なく存在するようです。

 あるいは、北朝鮮が垂直式や魚雷発射式巡航ミサイル技術を手に入れたら、それは潜水艦発射式弾道ミサイル能力への最も簡単で最速の道かも知れません。

背 景

 1980年代後期、北朝鮮は潜水艦にミサイルを搭載するためにいくつかの問題を抱えていました。

 第一にウイスキー級、ロメオ級潜水艦は弾道ミサイルの運搬機へ修正する能力が著しく制限されていました。第二に、北朝鮮は潜水艦にミサイルを搭載して発射するために必要な技術的経験を持ちませんでした。第三に、北朝鮮は潜水艦や水上艦から容易に洋上発射できる弾道サミルを所持していませんでした。

 その後、1993年に北朝鮮は、廃棄されたロシア製フォックストロット級パトロール潜水艦12隻、ゴルフⅡ級弾道ミサイル潜水艦を鉄くずにするために購入すべく東京のトーエン貿易と合弁事業を設立しました。

 1994年、最初の潜水艦がウラジオストクから羅津市の第28造船所の乾ドックへと曳航されました。北朝鮮が潜水艦を改造して、再び就航させる懸念がありました。懸念に答えて、ロシア海軍当局は、艦船は戦闘用途に回復させられない状態で、すべての武器は解体され、高価な金属は取り除いたと言いました。しかし、北朝鮮は疑いなく、解体する前に船を詳細に調べました。

 特に、もともとSS-N-5弾道ミサイル3基を装備するゴルフⅡ級潜水艦の調査は、伝えられるところでは、発射チューブと安定用サブシステムを含むミサイル発射システムの重要部分を保持していたために、非常に有益でした。しかし、艦船にはミサイルや関連する発射統制システムを含みませんでした。

 2000年代初頭までに、北朝鮮は弾道ミサイル発射技術を洋上のシステムへ取り込む実験をしていました。伝えられるところでは、初期のステップは商船にこれらのシステムを設置する努力に集中しました。

商用衛星写真による分析

 2010年から現在までの北朝鮮潜水艦基地と潜水艦造船所の商用衛星写真の評価は、北朝鮮がゴルフⅡ潜水艦を改修した証拠は見出さず、いくつかの報告で仮定されたように、東海岸の新浦市の造船所に新しい試験台の建設を確認しました。

 さらに、ある報道は2014年に馬養島(Mayang-do)の海軍基地にSLBM発射チューブが見つかったことを示し、こうした活動は新浦南造船所との協力で、海事研究所の職員によって行われているようです。海事研究所は馬養島海軍基地の4km北北西にある本土の新浦市に本部を置きます。両者の位置関係はこの断定を支持します。

 作業用道路の630m南西に位置する新しい試験台の建設は、既存の小さな試験台が破壊され、新しい施設の等級付けが始まった時、2013年9月にはじめて確認されました。2013年10月までに、試験台用のコンクリートの受け台が注がれました。2014年4月までに、新しい試験台の建設は完了しました。

 試験台は35×30mのコンクリートの受け台と高さ12mの試験台から構成されます。保護用の盛り土で三方を保護された41×32mの試験棟が試験台に隣接します。支援棟2棟が保護用の盛り土で保護されています。地下施設らしい施設があります。80×10mの保護用盛り土が試験台の北東25mに位置し、施設と造船所との間にあります。


 昨日は記事を更新できずにすみませんでした。

 記事は一部を紹介しました。開発経緯に関する部分は大半を省略しました。知りたければ「背景」の原文を読んでください。

 国内報道では確証の高い話のように書いていますが、原文には推論であることと、さらに訳出しませんでしたが、北朝鮮の脅威は低く見積もっても誇張されてもいけないと書いてあり、確信がある意見ではないことが断り書きされています。

 ただ、これまでにも馬養島で発射チューブの写真が撮影されたこともあり、北朝鮮が垂直発射式のミサイルシステムを開発していることは間違いがないものと思われます。

 しかし、実験台の位置には驚きます。ここからミサイルを発射すると、狙い通りに飛ばなかった場合、周辺の施設に落下する危険があります。もっとも、北朝鮮の舞水端里のロケット施設も、周辺に民家があり、北朝鮮の安全意識が極度に低いことを窺わせています。施設の南東には馬養島があり、打ち上げの邪魔です。もちろん、ここは海軍基地なので、民家はありません。南西になら短距離用の射程を確保できるかも知れませんが、ミサイルが誤って新浦市の市街地の方へ飛んだらどうするのでしょうか。なにより、これは長距離弾道ミサイルの発射実験台ではない可能性を示しているのかも知れません。

 発射システムだけでなく、小型核弾頭が完成していないと、核ミサイルには搭載できません。潜水艦発射の弾道ミサイルは、テポドンのような長距離弾道ミサイルよりも、さらに小型です。そこまでの小型化を北朝鮮が実現したとは考えにくいところです。

 実験台が本物なら、いずれ打ち上げ実験が行われます。そこで初めて、北朝鮮の意図が確認できるでしょう。

 


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