シリア軍がコバネ戦を利用して攻勢を開始

2014.10.23


 BBCによれば、シリア軍は反政府派支配地域で空爆を劇的に増やし、ここ数日間で200回以上も行いました。

 人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」は、空種の大半が日曜日の深夜から火曜日の正午までの間に西部地域で起こったと言いました。犠牲者は多数ですが、人権団体は数字を伝えませんでした。

 激化された攻撃は米主導の軍隊がイスラム国への爆撃を続ける最中に起こります。アメリカとアラブ諸国のジェット機は、クルド人が包囲されているコバネ(Kobane)周辺でイスラム国の陣地を攻撃しています。

 対イスラム国国際連合の米特使、ジョン・アレン(John Allen)は、空中投下した軍用品の一部が過激派グループに渡ったにも関わらず、それを擁護しました。彼は、イラク北部のクルド地域政府(the Kurdistan Regional Government)が提供した小火器、弾薬、武器の貨物、28個中1個だけが、イスラム国の手に落ちたと言いました。彼が話した直後、クルド議会は約ペシュ・メルガ(Peshmerga)の戦闘員120人をコバネに派遣することを承認しました。トルコは月曜日にペシュ・メルががシリアへ越境する許可を発表しました。トルコ政府はトルコのクルド人が越境することは拒否しました。トルコ側の国境地帯にいるBBCのカスラ・ナッジ記者(Kasra Naji)は、いるペシュ・メルガが到着するかは不明だと言います。当局者は彼らがコバネのクルド人が欲しがっている重機関銃を持ってくると言います。

 シリア空軍は反政府派支配地域、クナイトラ(Quneitra)、ダルア(Deraa)、ダマスカス郊外(Damascus)、ハマ(Hama)、イデリブ(Idlib)、アレッポ(Aleppo)を攻撃しました。

 人権団体は空軍は平均12〜20回の空爆を行いますから、36時間で210回は急増を意味すると言います。アナリストは、イスラム国と戦えるように反政府グループがアメリカと同盟国から訓練と装備を受け取る前に、を弱体化させようとして、シリア軍が空爆を強化しているかも知れないと言いました。

 これとは別に、オムラン・アル・ゾウビ情報大臣(Information Minister Omran al-Zoubi)は、シリア空軍はイスラム国が押収したジェット機3機中の2機を破壊したと言いました。ジェット機はアレッポ郊外のジャラヒ空軍基地の滑走路に着陸しているときに爆撃されたと、彼は言いました。空軍はもう1機を捜索中です。金曜日、人権活動家はイスラム国がアレッポ上空で、元イラク空軍パイロットの助けを借りてジェット機を飛ばしたと言いました。

 ゾウビ大臣は、シリア陸軍と空軍は、イスラム国に対する国際連合に参加していないのに、コバネのクルド人戦闘員に軍事・兵站支援を提供してきたとも言いました。

 military.comによれば、アサド大統領は米主導のイスラム国との戦いを利用し、反政府派への攻撃を激化しています。

 アメリカと同盟国のジェット機がシリア北部の過激派が支配する街へ急降下したため、シリア軍はイスラム国支配地域での活動を縮小し、対立を避けるために活動をできるだけ小さくしました。その代わりに、シリア軍は現在、そのエネルギーをダマスカスとアレッポに集中しています。


 記事は一部を紹介しました。

  military.comの記事は大半を省略しましたが、各地でシリア軍が攻勢をかけている様子が書かれています。

 コバネ戦に介入する際、アメリカはシリア軍を利することがないように配慮すると言っていましたが、こうした問題は不可避の部分があります。

 当サイトでは昨年、シリア軍の化学兵器使用が明らかになったときに、すでに遅すぎるものの、空爆を行って反政府派を支援しないと、シリア内戦はさらに悪化し、イスラム過激派の流入による拡大が起きると書きました。結果、自分でも予想した以上に、イスラム過激派が台頭し、ほとんど予想しなかったほどの事態となりました。

 コバネへの空爆は支持できるものの、それは次善の策であり、そこには欠点もあると思っています。すると、やはりアサド政権はそれを最大限に利用しようと行動を起こしました。これが戦いの力学なのです。

 トルコはクルド人を支援したくはありません。それでも、この流れでは支援を決めるしかありませんでした。イラクのクルド人に限定して越境を認めるなど、かつては考えられない妥協案も生まれてくるのです。これも戦いの力学です。

 シリア政府は反政府派を攻撃し、クルド人を支援していると声明することで、テロと戦う国際的連帯の中に滑り込もうとしています。トルコからすればクルド人は過激派でも、いまやアメリカなどが支援しています。ここはイスラム国を敵として、自分の立場を正当化できます。ジェット戦闘機も破壊できたようですし、今が宣伝のチャンスです。

 こういう戦いの力学を理解しないと、戦争被害者への支援も成功しないのです。軍事知識を活用した平和追求でないと、戦いの力学が我々を支配し、余計に大きな戦いへと向かわせることになるのです。

 


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