イスラム国がシリア領内のトルコ飛び地へ進撃

2014.10.1


 alarabiya.netによれば、イスラム国の民兵はシリア領内のトルコの飛び地、スレイマン・シャー(Suleyman Shah)の墓地(kmzフィアルはこちら)へ向かって前進していると、トルコのビュレント・アインク副首相(Deputy Prime Minister Bulent Arinc)は言いました。

 4月にトルコはオスマントルコ帝国を建国したオスマン一世(Osman I)の祖父、スレイマン・シャー(1178〜1227)を守るために兵士を派遣しました。トルコは、トルコ・シリア国境から30km、ユーフラテス川の川岸に位置し、1921年にフランス領シリアでフランスと合意した墓の支配権を主張します。トルコは霊廟を守ると言いました。

 アインク副首相はイラクとシリアの軍事行動に関する議会命令が潜在的脅威すべてをカバーすると言いました。

 aydinlikdaily.comによれば、イスラム国は霊廟を包囲しています。トルコ兵36人が霊廟を守るために派遣されています。アラブ部族長がイスラム国民兵1,100人が月曜の夜までに霊廟周辺に配置されました。地元筋は、民兵はここ3日間にこの地域に進出し、トルコ兵を人質にするのは時間の問題だと主張しました。


 記事は一部を紹介しました。

 この墓のことは知りませんでした。しかし、今年3月にもイスラム国が墓を包囲したことがあるようで、いくつかの記事が見つかりました。

 墓はダブカダムから直線距離で約90kmの距離、石造りの城「ジャベル・カレスィ」の中にあります。トルコの国家憲兵(ジャンダルマ) が警備しています。

 ジャベル・カレスィは200m×60mの長方形に近い形で、川に突き出た形をしており、別に細い小道があります。攻撃する場合は、この小道は封鎖するだけで、無視してよく、地続きの部分から攻め入ることになります。十分な兵力さえあれば、イスラム国でも占領が可能です。

 イスラム国としては、この霊廟は軍事的には無視してよいものですが、政治的には排除すべきものです。トルコ人にとって神聖化されている墓地をイスラム国内に残すわけにはいきません。

 霊廟が小さいので、大部隊は置けません。配置されているのは1個小隊規模です。イスラム国はトルコ軍よりも30倍優位な兵数を保っています。普通、軍事作戦に必要なのは相手よりも3倍優位な兵数ですから、誰の目にも守備部隊は絶体絶命です。トルコ兵は特殊部隊に強化されているとの記事もありますが、この兵数差では大した意味はありません。

 必然的にトルコは、偵察機でイスラム国の配置を調べた上で、空爆するしかありません。もしかすると、米軍やアラブ諸国の軍隊がやるかも知れませんが、どこであれ、それ以外に守備隊を守る術はありません。猛爆により、イスラム国の包囲網を破壊するしかないのです。

 これによって、トルコがイスラム国との戦いに巻き込まれるという主張は成り立ちません。普通、トルコはもっと冷静な考え方で対処しています。霊廟を守るために戦うとしても、それ以外に無用な戦いまではやりません。


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