化学兵器爆撃は環境汚染を引き起こす

2013.9.2


 military.comによれば、専門家は化学兵器の貯蔵施設を安全に爆破することはできないと言います。

 他の施設への爆撃は、米軍が一部の神経ガスの追跡に失敗しているため、どこにあるかを知らない危険な化学兵器を放出する可能性があります。

 化学兵器の貯蔵への爆撃は、故意または偶然に、近くにいる民間人を殺すか、長く続く環境の激変、あるいはその両方を引き起こすと、5人の専門家が言いました。理想的な条件の下で、そしてシリアでは条件は理想的ではないでしょうが、爆発は少なくとも致死型の毒物の20~30%を残すでしょう。

 非営利的団体「the Arms Control Association」の事務局長、ダリル・キンブル(Daryl Kimball)は「通常弾を未知の化学剤を保持する貯蔵施設に投下するならば……我々はシリアの武器庫のどこに何があるかを正確に知りませんが……それらの薬剤の一部は無力化され、一部は拡散するでしょう」「それらすべてを破壊することはできないのです」。彼は「疑われる貯蔵施設はダマスカスやホムス、ハマのような主要な都市の近くにあります。これらの街は200万人を軽く越える人口を持ちます」。

 兵士が協力し、化学剤を押収し、特別な処理工場で燃やすことなしに、神経剤の完全な破壊を確実にする方法があるかと尋ねると、フランスの化学兵器コンサルタントで、現場で長い経験を持つラルフ・トラップ(Ralf Trapp)単に「無理」と言いました。トラップは、化学剤を適切に焼却処理するには、温度は華氏2,100度(摂氏1148.9度)にしなければならないと言いました。専門家は、特に風と気温を含む天候の要素、時刻、何が貯蔵されているか、どれだけあるかが関係し、建物がどれくらい強いかは爆撃でどんな不注意な損害が起こり得るかという問題です。

 化学兵器の貯蔵庫を破壊した先例があります。1991年、湾岸戦争の最中、米軍はイラクのアル・ムサンナ(Al Muthanna)のバンカー13を爆撃しました。当局者はそこは2,500発のサリンを搭載したロケット砲があると考え、同じ神経ガスがシリアにあるとされます。20年以上経って、この施設は今でも誰もいけないほど汚染されています。入口が爆発物、化学剤と物理的危害にさらしかねないため、このバンカーは査察官には特別な問題があったと、化学兵器禁止機構の2012年の報告書は言います。

 米国防総省の作戦立案者も、シリア政府が新しい場所へ移動した兵器貯蔵所を攻撃すると偶発的に神経剤の攻撃を引き起こすことを懸念しています。元米情報当局者1人とホワイトハウスから情報を説明された別の米当局者3人によると、過去半年にわたり、戦線の移動とシリアからの偵察衛星とスパイ活動が不完全なことから、米情報機関はシリア政府の化学兵器の一部を誰が統制しているのかを追跡し損ねました。彼らは公言する権限がないため、匿名を希望しました。

 20年以上大量破壊兵器を監視してきた「the Physicians for Human Rights」の国際政策責任者のスザンナ・シルキン(Susannah Sirkin)は、とても大きなリスクがあると言いました。「化学剤を環境に分散させる危険があります」「サリンがまったく見つからないとすれば、それはテロです」。

 別の問題は、内戦が争われている近くの貯蔵施設を爆撃することは、化学兵器がイスラム過激派やアサド派の民兵を含めた他の者たちの手に落ちるかも知れないということだと、キンブルは言いました。「我々はシリアで先例のない状況を見ているのです」。

 BBCによれば、ジョン・ケリー国務長官(Secretary of State John Kerry)は「過去24時間で、我々はアメリカに提供され、ダマスカス東部で化学兵器に最初に対応した人たちをテストしたサンプルを通じて、毛髪と血液のサンプルからサリンの陽性反応がでたことを知りました」と日曜日のテレビ番組「Meet The Press」で言いました。(番組の映像はこちら

 この記事には投入できる戦力についても書いてあります。

  • 米軍駆逐艦4隻 USSグレーヴリー(USS Gravely)、USSラメージ(USS Ramage)、USSバリー(USS Barry)、USSマハン(USS Mahan)がミサイルを装備して、東地中海にいます。
  • ミサイルは潜水艦からも発射できますが、米海軍はそれらの位置を明かしません。
  • トルコのインシルリクとイズミル、ヨルダンの空軍基地は空襲を行うのに使えます。
  • より広い地域に空母二隻、USSニミッツ(USS Nimitz)とUSSハリー・S・トルーマン(USS Harry S Truman)がいます。
  • フランスの空母チャールズ・ドゴール(Charles de Gaulle)が西地中海のトゥーロン(Toulon)にいます。
  • フランスの航空機、ラファールとミラージュはアラブ首長国連邦のダーラン(Al-Dhahra)からも活動できます。

 記事は一部を紹介しました。

 化学物質の貯蔵施設が都市の近くにあるとは意外でした。イラクでの先例は、この記事を読んで思い出せました。しかし、サリンは水で分解するはずですが、これほど長く毒性を持つとは意外です。

 巡航ミサイルの攻撃は、通常、民間人へはほとんど被害をもたらしません。民間人が死亡した事例はありますが、他の手法に比べると被害は限られます。しかし、化学兵器が漏洩することで被害が拡大する恐れがあるわけです。

 ナパーム弾なら900〜1,300度で燃やせますが、掩蔽壕に入っている場合、バンカーバスター弾を使う必要があり、これはナパーム弾のような燃焼効果はありません。爆薬で地下施設を破壊する機能しかありません。考えてみれば、化学兵器の貯蔵庫を破壊する作戦は耳にしたことがありません。その為の兵器も開発してこなかったとすれば、それは怠慢だったということです。

 化学剤を無力化するために、米政府はシリア政府に爆撃した掩蔽壕をナパーム弾で焼けと警告するのでしょうか?。これは聞いたことがない対処法です。敵味方が協力し合って化学兵器に対処するわけですから。

 米議会の承認はおそらく問題ないでしょう。共和党ですら、反政府派を守るためにシリアを攻撃しろとオバマ大統領に迫っていましたし、彼らは元々、外国を攻撃したがる傾向があります。

 しかし、国際世論は盛り上がりそうにありません。それは、これまで米政府が嘘をついて戦争をしてきたツケです。脅威を常に誇張し、大量の核兵器を製造してきた過去は消しようがありません。アリもしない脅威を開戦の根拠にするのがアメリカの伝統でした。

 そして、大衆は嘘の脅威を信じたがるのです。2003年のイラク侵攻で、大した反対意見は出ませんでした。こういう調子だから、我々は戦争で苦労する訳です。


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