フランス政府のサリン攻撃報告書

2013.9.19


 alarabiya.netがフランス政府が公表した報告書の全文を掲載しました。それから気になる記述を紹介します。シリアが持つ化学兵器運搬システムのリストが3ページ目に載っていますが、それらは省略します。

8月21日以前の攻撃に関する情報と見解

 今年4月29日のサラケブ(Saraqeb)、同4月中旬のジョバル(Jobar)の現場と犠牲者から採取された生物学的(血液、尿)、環境的(地面)、物質的(砲弾の破片)サンプルからサリンを検出しました。この日、ヘリコプターがサラケブ上空から街西部に小型爆弾を落とし、白煙があがりました。

8月21日の攻撃に関する情報と見解

 8月21日の攻撃は古典的な戦術パターン(砲撃で準備を行ってからの地上攻勢)に合致し、化学剤の使用はシリア軍のドクトリンに、軍事レベルで、戦術機動の一貫性と一致します。

 通常戦力の砲爆撃が午前3〜4時に東ゴウタ(Ghouta East )に行われました。同時に、ザマルカ(Zamalka)、カファ・バトナ(Kafr Batna)、アイン・タルマ(Ayn Tarma)に化学攻撃が撃ち込まれました。午前6時、これらの街に政府軍の地上攻勢が始まりました。

 複数の情報筋は、ロケット砲が使われ、最も知られた弾薬(ミサイル、爆弾)とは違うと説明しました。我々のアナリストは、過去とこの作戦に関して、現場で観測されたロケットの残骸が化学剤が使えることを確認しました。

 シリア軍はその後に攻撃を受けた地域に重要な砲爆弾を行いました。これは査察間の到着を数日間遅らせました。これらの要素は、証拠を破壊しようとする明確な意図を確認します。さらに、シリア軍は、熱が生じる空気の動きで、大気を浄化することを狙い、放火を行いました。

 我々の情報機関は、シリア政府がこの時にダマスカスで反政府派の広範な攻撃を恐れていたことを確認しました。我々は、シリア政府はこの攻撃により、締め付けを緩め、首都の戦略的場所を守ろうとしていたと評価します。たとえば、モアダミヤ(Moadamiya)は空軍情報部の兵舎があるメッツエ軍用飛行場の近くにあります。

 攻撃目標をみれば、シリア政府は反政府派にとって重要な場所を狙っていました。

 シリアの反政府派は化学剤を用いて、この規模の作戦を行う能力を持ちません。反政府派グループは、現段階で、これらの化学剤を貯蔵し、まして事件当夜に使われたものに匹敵する割合で、使用する能力がありません。これらのグループには、当夜に使われた軌道で実行する経験もノウハウも持ちません。


 フランスの報告書には、これまで知られなかった情報も書かれていますが、直接的な証拠はあまり載っていません。この報告書も公開できる情報だけで書かれているので、肝心な具体的事実に乏しいのです。

 米政府の報告書も同じです。米政府は早期警戒衛星がロケットの弾道を捉えたと言っています。データを見れば、ロケットが、シリア軍基地から着弾地点へ飛んだことは明らかのはずです。これを公開すれば、証拠は明白なのですが、それは衛星の性能を暴露することになり、できないのです。通信傍受も同じで、通話音声を公開すれば、盗聴能力を暴露します。

 証拠を公開できないのは、ごくもっともな理由です。シリア軍が化学攻撃を行ったのは、証拠が見つからないと考えてではなく、見つかっても、諜報がらみの情報は出せないと踏んだためなのかも知れません。フランスの報告書は、後半は状況証拠が多く、付け入られる隙があります。これが現在の国際政治の正義ですが、改善を求める声は、個人や小さなベルでは起きても、政治的レベルまでに大きくならないという問題があります。こういう問題を少しでも小さくする方向に世界を導かないことには、軍事紛争はなくなりません。


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