反政府派が化学兵器を使った証拠

2013.9.11


 military.comによれば、化学兵器攻撃を反政府側が行ったとする報道について、ホワイトハウスはコメントしていません。

 8月21日に化学兵器の攻撃を受けたゴウタ(Ghouta)の住民と反政府派へのインタビューに基づく報道は、サウジアラビアから化学兵器を手に入れた反政府派が誤って放出したという地元民の話に基づいています。

 ある反政府派の父親は、彼の息子と他12人が、ある者はチューブ状といい、ある者は巨大なガスボトルのように見えると言ったものを含んだ化学兵器の貯蔵に使っていた、トンネルの中で死亡したと言いました。この話は8月29日にミネソタの「MintPress News」に載りました。このスタッフにはAP、BBC、The Guardian、National Public Radio、The Huffington PostのOBを含みます。

 報道記事はオバマ政権が公式評価で示している話を、化学兵器を使った者だけでなく、犠牲者の数についても否定します。

 「MintPress News」は死者を355人以上として、犠牲者を治療した国境なき医師団の数字を報じました。米政府は8月30日に公表した4ページの報告書では死者1,429人(少なくとも子供426人を含む)としています。イギリスは死者を少なくとも350人とし、フランスは281人としています。

 シリアにいた「MintPress News」のヤヒヤ・アバブナ記者(Yahya Ababneh)は、彼がインタビューした反政府派は、彼らがチューブとボトル状の兵器を毎日、別の場所へと動かしていたと言いました。ある男は彼に、武器をある場所に運んだが、二度と動かさなかったと言いました。

 米政府の評価では、反政府派には化学兵器を製造し、発射する能力がないと言います。

 7月にロシアの調査員は国連に、反政府派がアレッポで3月に26人を殺した化学兵器を使ったという証拠を含む100ページの報告書を提供しました。国連は報告書を受け取りましたが、公表しませんでした。

 5月に国連は化学兵器を調査するために初期のチームをシリアに送りました。同行した外交官は調査員はアサド政権は化学兵器を使った証拠を見つけず、一部の反政府派が持っていることを示す証言を集めたと言いました。さらに同じ月、いくつかのトルコの新聞がアルカイダ系のアル・ヌスラ戦線のメンバー数十人が逮捕され、彼らは4ポンドのサリンを持っていたと報じました。トルコ当局はこのグループがサリンを持っていたことを否定しました。

 国家安全保障報道官、ベルナデット・ミーハン(Bernadette Meehan)は、オバマ政権は極めて明白な事例を説明したと言いました。アサド政権が8月21日の化学兵器攻撃を行ったという高い信頼性評価の理由を説明したと言いました。

 民主党のアラン・グレーソン下院議員(Rep. Alan Grayson)は日曜日、ニューヨークタイムズのコラムで、彼は米政府の主張に懐疑的だと書きました。彼は政府が公表した機密版報告書は12ページで、裏づけるための機密や機密ではない、他のいかなる情報もなかったと言いました。「機密扱いではない要旨は、盗聴した電話の会話、ソーシャルメディアへの投稿の類を引き合いにし、これらの一つは実際に引用したり添付されていません。YouTubeの映像すらです」。グレーソン議員は、攻撃を始める支持を得るために要請するときですら、ホワイトハウスが議会を重要な情報を共有する気がないと言いました。「私の立場は単純です。この出来事やほかのことで、政権が私に戦争を支持して投票して欲しいのなら、私は事実のすべてを知る必要があります。そして、こう感じているのは私だけではありません」。

 「MintPress News」がインタビューした反政府派は、武器はサウジアラビアの情報部の長、バンダル・ビン・サルタン王子(Prince Bandar bin Sultan)の権威の下で彼らに渡されたと言いました。「K」という名前だけで知られる女性の反政府兵士は、反政府派は「これらの兵器が何で、どのように使うかについて聞いていません。我々はそれらが化学兵器かを知りません。我々はそれらが化学兵器だとは想像もしませんでした」。サウジ発の兵器は、特にサルタン王子がサウジ王族で情報機関の長であるため、彼が反政府派に武器を与えたことを承認したとされる人物だという、アメリカにとっての問題を証明します。

 4年間中東で取材をしたアバブナは、インタビューした人たちが彼らがしたり、見たものについて率直に彼に語ったという確証を示しました。「彼らはそこで働き、思うままに話ました。彼らは言葉を用意していませんでした」。

 国連の査問委員会が過去の化学兵器使用について調べるためにシリアに行った時、スイス人で国連刑事国際法裁判2件での検察官だったカーラ・デル・ポンテ(Carla del Ponte)は、証拠は反政府派が化学兵器を使ったことを示していると言いました。「シリア政府が化学兵器を使ったという徴候はまったくありませんでした」。


 記事は一部を紹介しました。

 米政府が報告書を出したとき、気になったのが、反政府派には化学兵器がないと断定していたことでした。まったくないと証明するには、広範な調査が必要です。これまでの経緯からして、反政府派が大量の化学兵器を持っているとは考えにくいとは言えるものの、断言するのは無理に思えます。しかも、過去に国連査察チームが、反政府派による化学兵器の使用を確認していたのですから、その報告を無視したことになります。

 そこで、こういう記事が出てくるわけですが、間違ってサリンを放出したという話は、なかなか信じがたい部分があります。そう簡単に漏洩するような容器にサリンを入れるとは思えません。また、これが化学兵器攻撃のすべてなら、なぜあれほど広範な、離れた地域で被害者が出たのかの説明がつきません。サリンは液状で保管されていたはずですが、ガス化しないと拡散しません。トンネル内で誤ってケースを破損したのなら、汚染はトンネル内に留まったはずです。トンネル内からサリンが漏洩したのなら、付近の反政府派がトンネルを閉鎖するための努力をしたはずです。こういう状況では、犠牲者は一ヶ所に集中するはずです。

 もう一つは、サウジから化学兵器が反政府派に提供されていたという話ですが、これが本当なら、重大なことです。サウジは化学兵器禁止条約に参加しているのに、化学兵器を保有していたことになるからです。この条約は、化学兵器の開発、生産、保有などを包括的に禁止し、2007年4月までに廃棄すると定めています。持っていないはずの兵器を持ち、輸出したことが本当なら、これは国連の場で大きな問題として取り上げられなければなりません。しかし、果たして本当なのでしょうか。

 インタビューに応じた人たちも、情報の断片しか握っていません。我々はその断片を見ているわけです。総計に結論すべきではありません。


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