反政府派への支援強化は遅すぎたか?

2013.6.15

 military.comによれば、アナリストとシリアの反政府派は、シリアの反政府派に武器を送る米政府の決定は遅すぎたと言います。

 シリア軍は全土で攻勢を開始してから優勢を得て、反政府軍を敗走させ、約30の町村を奪還しました。ヒズボラに支援された軍事攻勢は戦場の勢いを変え、反政府軍の拠点を解体し、反政府軍を敗走させたと、軍事専門家は言います。「初めて、政府軍は反政府派が再編成する機会を与えないために、空軍力の支援を得る中、地上軍で圧倒する戦略を用いました」と、アンマンにある「the Military Centre for Strategic Studies」の理事、マムード・アイダイサット(Mahmoud Irdaisat)は言いました。「いまや、反政府軍が隠れられる村や近隣は一つもありません」と彼は言いました。

 ホワイトハウスの副報道官、ベン・ローズ(Ben Rhodes)は木曜日に、反政府軍への追加支援はアメリカが現在行っているものとは実質的に異なると言いました。詳細は控えましたが、彼は「政治的、軍事的両方の反政府派はアメリカの支援を受けられることに注意することが重要だと言えば足ります」と彼は言いました。

 政府軍は5月に攻勢を開始し、自由シリア軍は過去2週間に1日平均約300人の犠牲者を報告しました。「我々は、至るところで劣勢で、装備がなく、うまく立ち回れないのです」とダマスカス東部の郊外、ゴウタ(Ghotta)の戦いで400人の戦闘員を失った大隊指揮官、モハメッド・アル・ゴラニ(Mohammed al-Golani)は言いました。「我々はミサイルとシーア派全体ではない政府軍の残りと直面する準備ができていました」。

 多勢に無勢であること以上に、反政府軍は資金、武器、ガソリンすら欠乏し身動きがとれないと言います。反政府軍戦闘員は、政府軍の重砲と空軍力に匹敵しない軽火器を使うまでに衰退しました。

 反政府軍への武器禁輸を解除するという欧州連合の決定は、8月までに有効にならないことで、アナリストは政府軍の速度早い軍事作戦に生き残れないかも知れないと警告します。「反政府軍は数ヶ月も西欧と湾岸諸国が武器と軍事支援を提供するのを待ちました」と「the Doha Brookings Centre」の理事、サルマン・シェイク(Salman Sheikh)は言いました。「いまや、政府軍は迅速さとヒズボラの介入を得て、西欧が何をしても、少なすぎ、遅すぎるでしょう」。

 最新の見積もりで、アメリカは少なくともシリア内戦で93,000人が死亡したと言いました。実際の数字はより高いかも知れません。この数字は特定できない38,000人の死者を含んでいません。

 最近の政府軍の攻勢で、ゲームチェンジャーと専門家が呼ぶものは、政府軍が奪還した地域の性質と位置です。政府軍は、国境の戦略的価値があり、反政府軍がヨルダンとレバノンからの補給路への入口にあたるアル・クサイル(al-Kussair)、カルベット・ガズレー(Khirbet Ghazleh)、サヘム・アル・ゴラン(Sahem al-Golan)、クナイトラ(Quneitra・kmzフィアルはこちら)などの奪還に集中しました。「これらの勝利で、政府軍は反政府軍を外の世界から実質的に遮断しました」とエクセター大学の中東政治の講師、オマル・アショア(Omar Ashour)は言いました。

 政府軍の攻勢が続けば、反政府派がすぐに最後を向かうかも知れないことは明白です。自由シリア軍のアル・ゴラニは「我々がこれ以上待たされるのなら、次の犠牲者はシリア革命そのものになるでしょう」と警告します。


 記事は一部を紹介しました。

 この記事には非常に重要な事柄が書かれています。

  • 政府軍は約30の町村を奪還した。
  • 自由シリア軍は、過去2週間に1日平均約300人の犠牲者を出すほどの攻勢を受けた。
  • ゴウタの戦いで400人の反政府軍の戦闘員が死亡した。
  • 政府軍は、国境の戦略的価値があり、反政府軍がヨルダンとレバノンからの補給路への入口にあたる複数の町を奪還した。

 非常にまずい状況を思わせる事ばかりです。政府軍が奪還した町の位置がすべて分からないのが残念です。

 しかし、悪い情報ばかりではないのかも知れません。この攻勢が行われる前、ヨルダン国境の町を反政府派が次々と獲得しました。それらに匹敵する町を、政府軍が取り戻したということかも知れません。

 アメリカの支援は7月には届いているでしょう。欧州連合の支援は8月以降です。果たして反政府派が持ちこたえられるか、支援が間に合うかが問題です。支援のタイミングが遅いことは、当サイトでも繰り返し述べてきました。次の冬が来るまでに戦いを終わらせないと、シリアの民生は壊滅的状況になるかもしれません。

 現在の反政府派の状況が不透明すぎますね。湾岸諸国から得られた支援はどんなものだったのかが気になります。重迫撃砲(多分、自走式)や航空機、軍事情報も手に入れたはずだったのですが、それらはどうなったのでしょうか。

 はっきり分からないものの、まだ絶望的な状況までは行っていないと思います。ホムスが完全に支配されたら、かなり危険です。アレッポに数日中に攻勢がかけられるという情報がありましたが、今のところ動きはありません。アレッポ攻勢の準備は、少なくとも1ヶ月以上かかると思います。

 オバマ政権はいま、これまでとは違う意味で、真価が問われています。オバマ政権はイラクとアフガニスタンの戦争から引き揚げることで成功しましたが、シリア内戦の解決で成功できれば、この政権は盤石です。その上、次の米史上初の女性大統領誕生も現実味を帯びてきます。撤退という明確な目標がある軍事作戦と違い、近隣諸国の介入という状況の中、劣勢の軍を勝たせるのは、一層難しい政策です。これを成功させるような知恵者が米軍高官の中にいるのかが問題です。


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