シリア内戦のイラク西部への波及

2013.6.13

 military.comによれば、シリア内戦がイラクへ波及することが増えています。

 シリア人のトラック運転手が選ばれ、イラク国内で撃たれました。シリア兵が今年越境して避難しましたが、アルカイダに虐殺されました。戦いになれたイラク人戦闘員が国境地帯を縦横に動いています。アルカイダ参加のスンニ派武装勢力はシリアの反政府派のイスラム過激派と協力し、イラク人のシーア派戦闘員はシリア軍と共に戦うためにヒズボラに協力しています。米当局者はイランの武器がイラクの空域を通ってダマスカスへ行き来していると考えています。

 「シリアで起きていることは、特に戦いをイラクへ持ってこようとしてからは、我々に大きく、明らかな影響があります」と、ヌーリ・アル・マリキ首相(Prime Minister Nouri al-Maliki)の広報官、アリ・アル・ムサウィ(Ali al-Moussawi)は言いました。

 4月以来、イラクでは2,000人近い命が奪われました。米軍がまだ駐留していた5年間でも殺害の範囲はこれほど悪くありませんでした。

 イラクはシリア内戦に中立の立場のままで、マリキ首相は平和的な政治的解決を呼び掛けてきました。彼は反政府派の勝利はイラクとレバノンに派閥抗争を招くと警告もしています。火曜日に、イラクのホシャル・ジバリ外務大臣(Foreign Minister Hoshyar Zebari)は、イラクは内戦に公的あるいは軍事的な役割を果たしていないとし、バグダッドはイラク人戦闘員をシリアへ送ることを促進しないと言いました。

 国境での暴力は続き、日曜日に自由シリア軍の戦闘員との交戦でイラク人警備兵が殺され、他2人が負傷しました。国境兵はシリアからイラクへ忍び込もうとしたガンマンと密輸業者を阻止しました。

 国境地帯はスンニ派が支配するアンバル州(Anbar)とニナベ州(Ninevah)で、2003年の米主導の侵攻では武器とアルカイダ戦闘員のルートとなりました。数世紀にわたる文化的、部族的なつながりが砂漠の国境地帯を守っています。

 バグダッドに駐在する西欧の外交官は、イラクはシリアとの国境を限定的にしか支配していないと言いました。「(米主導の)連合国が持つ空軍力と偵察力をもってしても、国境を完全に支配はできません」と公言する権限がないために匿名を希望した外交官は言いました。「国境地帯には密輸のネットワークと非公式なリンクと交易があります」。

 アンバル州の州議員、サドオン・アル・シャーラン(Sadoun al-Shaalan)は、イラク軍とシリアのガンマンとの戦闘が一層増えつつあると言いました。彼は戦争で設ける密輸業者と戦闘員を行き来させる武装勢力が上昇の原因だと言いました。州内の都市部に派遣されたイラク軍部隊は、空軍の支援と荒れた、遠隔地での経験がないために砂漠の奥深くで武装勢力と戦う気がないことがあります。「大抵の場合、ガンマンと密輸業者は我が軍よりもよい武器や装備を持っています」。

 BBCによると、シリアの反政府軍がシリア東部の村を攻撃して、大半が政府派戦闘員であるシーア派住民多数を殺害しました。

 人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」は、少なくとも60人が火曜日にハトラ(Hatla)で死んだと言いました。この攻撃は村人による反政府派陣地への攻撃に対する報復のようでした。

 シリア軍のヘリコプターがレバノン北部の国境地帯にあるアーサル(Arsal)にミサイル3発を発射しました。ミサイルは1発が町の中心部に命中し、女性と彼女の娘が軽傷を負いました。

 アーサルはシリア国境から15kmの位置にあるスンニ派の町で、約27,000人のシリア難民の居住地です。クサイルの戦いでは反政府派の集結地点として使われました。

 デリゾール(Deir al-Zour・kmzファイルはこちら)の東にあるハトラの戦いは、政府派のシーア派民兵が、月曜日に近くの反政府派陣地へ攻撃をはじめ、少なくとも2人を殺した後ではじまりました。翌日、反政府派は集結して、ハトラを攻撃しました。60人の住民が殺されました。彼らの多くは数週間前に政府軍が武装した戦闘員でした。火曜日の戦闘で、少なくとも10人の反政府派兵士が死に、ハトラの住民は近くのジャフラ(Jafra)へ逃げることを強制されました。


 記事は一部を紹介しました。

 ダマスカスやアレッポの戦況が知りたいのですが、今日は東部やイラクへの波及に関する記事が報じられました。

 正直なところ、シリア内戦がイラクに大きく関わるようなことはないと思っています。確かに、国境線の治安は悪化しますが、そこからバグダッドまで不安定な波が波及するかというと、そこまでは行かないだろうと思っています。

 考えられるのは、シリア内戦で活気づいた国境付近のスンニ派が、シーア派のマリキ首相への反発を強めて、中央政府と対決するという構図です。しかし、そこまで行くにはかなりの段階が必要です。

 なによりも、早くシリア内戦を終わらせ、新政権を樹立することが、イラクの治安も向上させるのです。戦況に関するできるだけ詳しい情報と関係国による反政府派への支援が必要だと思っています。


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