ロシアの武器提供がシリアにもたらす危険性

2013.6.1


 BBCによれば、アメリカとドイツはロシアに、シリア内紛を長引かせるため、最新ミサイルシステムなどの兵器を供給しないように要請しました。

 ジョン・ケリー国務長官(Secretary of State John Kerry)は、ロシアの兵器は強い負の影響があり、イスラエルの安全保障を危うくすると言いました。ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外務大臣(Foreign Minister Guido Westerwelle)は、モスクワに和平交渉の邪魔をしないように求めました。

 大勢の反政府派戦闘員が金曜日に、政府軍とヒズボラの攻勢に対抗するためにクサイル(Qusair・kmzファイルはこちら)に到着しました。反政府派活動家は、町の人道上の状況は悪化し、800人の負傷者が治療を必要としていると言いました。

 ケリー国務長官とヴェスターヴェレ外務大臣は、出荷は確認されないものの、アサド大統領がS-300ミサイルシステムを提供するというロシアの契約が履行されたと言った翌日にワシントンで会談しました。

 ロシアの新聞二紙は、ミサイルが今年送られるかは不明だという国防筋の言を報じました。

 米ロ当局は、和平会議の地ならしをするために来週、会合を持ちます。

 BBCベイルート特派員のジム・ミュアー(Jim Muir)は、反政府派を会議に参加させるために、もっと多くのことが行われなければならないと言いました。彼は反対に、シリア政府は統一され、自信を持っているように見えると言います。

 シリア国営テレビは、政府軍とヒズボラの戦闘員が、クサイルのアルジュン地区(the Arjun district・kmzファイルはこちら)を木曜日に占領したと言いました。 

 車列が攻撃を受けて9人が死亡したため、金曜日に町の負傷者を搬出しようとする努力は失敗に終わったと、反政府派の活動家は言いました。30,000人がまだクサイルにおり、町の80%を反政府派が支配しているとこの情報源は言いますが、この数字は独自に確認されていません。「アサド政権が水の供給を支配しているので、水がまったくありませんし、4ヶ月間停電したままです」と、彼は言いました。

 military.comによれば、ロシアの航空機会社が金曜日に、少なくとも10機のジェット戦闘機をシリアに出荷する新しい契約を結ぶ予定だと言いました。

 ミグ社のセルゲイ・コロトコフ社長(Sergei Korotkov)は、モスクワにいるシリアの代表団が、ミグ-29 M/M2を出荷する新しい契約の詳細を詰めていると言いました。ロシア通信社によると、彼はシリアはさらにこうした戦闘機を10機買いたがっていると言いましたが、正確な数字は明かしませんでした。

 ロシアは外国の侵略からシリアを守るためだけに武器を提供していると言っています。しかし、ミグ戦闘機の出荷は、ロシアを世界的な批判にさらすため、ロシア政府は先に進む前に再考するかも知れません。

 ミグ社の公報は、コロトコフ社長の声明にコメントしておらず、社長は内紛中に保留されていた、過去に交渉していた取引について言及したのかも知れません。

 ロシアのメディアは、シリアは数年前にミグ-29 M/M2を12機、別の12機を買うオプションと共に発注したと報じます。ストックホルム国際平和研究所も、ロシアがシリアに24機の航空機を売る計画だと報告します。

 この他のロシア製武器の取引はシリア内戦の間は保留にされています。それには地上攻撃にも使える訓練用戦闘機ヤク-130が含まれています。


 記事は一部を紹介しました。

 おそらく、このミグの契約は、古いものの継続交渉なのでしょう。ロシア政府は以前から、すでに行われていた契約は有効だが、これ以上の契約はしないと表明していました。

 S-300とミグ-29について、ロシアが契約の見直しをするかが問題です。これを止めさせるのも、アメリカなどの西欧諸国の政治力です。今後行われる会談で、どのような話し合いがあるかに注目します。ロシアは新生シリアでのビジネスと、目の前にある武器契約とを天秤にかけたいと思っているはずです。

 気になるクサイルの攻防戦ですが、アルジュン地区はクサイルの北西約4.9kmにあり、ほぼ真っ直ぐな道路でつながっています。意外に遠い場所です。政府軍がクサイルを占領したと言ったのは、やはり進撃しただけに過ぎないのでしょう。

 反政府派の増援の人数や、どこに入ったのかが記事からは分かりません。戦いの行方に関する重要な情報は断片的なままです。公開情報から戦況を判断するのはむずかしいですね。


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