イスラエルがシリア領土内を空爆

2013.5.5


 BBCによれば、軍用機がレバノンのヒズボラに進んでいる武器を目標としているシリアに対する空爆を行ったと、イスラエルは言いました。

 イスラエルがこうした攻撃を行ったのは今年2回目です。同国から空爆に対する公式のコメントは出ていませんが、ヒズボラを含めたグループにシリアから武器が移送されたと感じれば行動に出ると、繰り返し述べていました。

 アナリストは、アメリカと同盟国が反政府派への武器提供だけでなく、飛行禁止区域を設定するために航空作戦を行うことも検討していますが、シリアの同盟ロシアはそうした措置に強く反対しています。


 記事は一部を紹介しました。

 この記事は主に、最近起きた民間人虐殺事件について書いていますが、その紹介は省略しました。というのは、こういう事件はこれまでに何度も起きているからです。記事には以前に起きた虐殺事件がリストアップされていますので、それを紹介します。

2011年4月 ダルアとダマスカスで治安部隊が群衆に発砲し、抗議者70人以上が死亡。

2011年12月
イデリブ州で2日間にわたり、軍の離反者100人以上が殺される。
2012年5月 ホムス近郊のホウラで約108人が殺され、後に国連がシリア軍と民兵を批判。
2012年8月 ダマスカス郊外のダラヤで政府軍が襲撃して、少なくとも300人が殺される。
2013年1月 ホムス近郊のハシウィヤで、少なくとも100人が殺され、家の中で焼かれた。

 今回の虐殺事件が戦況に影響を与えるとすれば、それはアメリカが民間人虐殺に関して、強い懸念を表明しているからです。武力でこうした虐殺行為を止めるべきではないかという意見がアメリカに広がれば、より強力な武力介入を実現させ、シリア政府は一層不利な状況に追い込まれるかも知れません。その点で、今回の事件は注目すべきです。中東ではこうした虐殺はしばしば起こりますが、西欧世界では容認できないものであるという文化的ギャップが戦況に影響を与える可能性に注目しましょう。

 こういう点について、日本人ももっと注意を払うべきだと思います。現代の日本人は、太平洋戦争中に、日本の憲兵隊や軍隊が行った戦争犯罪について無頓着すぎます。憲兵隊は非人道的な拷問を反日勢力に対して行い、軍隊は捕虜をひどく虐待しました。これは日本に対する軽蔑を買いかねないことなのですが、与党は隣国に「未来志向の歴史観」という過去の忘却を求め、戦争犯罪については極東軍事裁判の不備を理由に、すべての起訴が不当だったと決めつけようとしています。しかし、様々な人たちの証言によれば、戦地で行われた非人道的行為の中には否定しようもないものが含まれており、それらまで否定することは、日本への信頼や尊敬を失いかねないことです。そのためにも、現在進行中の戦争犯罪について、常に厳しい態度を示すことは重要なのです。

 結局、虐殺事件に関することばかり書いてしまいましたが、イスラエルの空爆は、ヒズボラのシリア内戦への関与を考える上で重要です。ヒズボラにそれほど大きな影響力はないと思うものの、イスラエルがシリア内戦に介入しすぎると、アルカイダの増援を誘発する可能性もあります。周辺国やテロ組織の動きにも関係する点で目を配る必要があります。


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