飯島参与訪朝の動機は米政府の日本軽視?

2013.5.21

 中国のRecord Chinaによれば、訪朝の動機について飯島勲内閣官房参与は、「拉致問題に対するオバマ大統領の関心が低いのが主な理由」であると述べました。

 飯島氏は、安倍首相が今年2月の訪米時に「拉致問題は自分の政権のうちに完全に解決する」との決意を伝えたものの、オバマ氏はこれに関心を示さず、核実験問題の解決にしか言及しなかったと語りました。これにより安倍首相は「自分たちで日本人の拉致問題を解決しなければならない」と決意するにいたったといいます。安倍首相は、米外交専門誌『フォーリン・ポリシー』の取材に対し、「他国とともに拉致問題を解決したいと考えているが、明らかに温度差が存在する」と語っています。


 オバマ大統領は自民党政権とは距離と起きたいと考えているので、安倍総理の言葉に耳を傾けようとしなかったのでしょう。それを、無視されたと反発して、今回の訪朝を企画したようです。もっとも、日本の提案で訪朝したのか、北朝鮮が訪朝を要請したのかは、今のところ明らかではありません。私は後者なのだろうと想像しています。北朝鮮が米韓と日本の間にくさびを打ち込むべく、何らかのメッセージを伝え、日本政府(主に外務省)がそれを真に受けて訪朝したのではないかと想像します。

 しかし、安倍総理はオバマ大統領のメッセージを誤って受け取り、自体をさらに悪化させていると思われます。まず、この訪朝が北朝鮮に宣伝のために利用されました。北朝鮮メディアは、この訪朝を外交的な成果として、国民に伝えています。北朝鮮に利用されている形になっています。このため、米韓からの不信感が増大しました。すべて北朝鮮が望む展開です。

 JNNによれば、安倍総理は、この訪朝に関連して「拉致問題は日本が主導的に解決する」と述べたとされます。これには驚かされます。北朝鮮が何の見返りもなく、拉致被害者を帰国させると、本気で考えているのでしょうか?。毎日新聞によると、すでに朝鮮労働党機関紙、労働新聞(電子版)は、日本が植民地支配で与えた被害について「徹底的な謝罪と賠償をすべきだ」と書いています。これは拉致問題の解決と引き替えに、謝罪と賠償を求められるわけで、それは「過去を忘れ、未来志向を」と訴える安倍政権に受諾できるわけがありません。つまり、安倍総理は達成できない外交活動のために、米韓との関係を犠牲にしているわけです。

 今の日本のマスコミは、こういう安倍総理の政策を支持する方向へ流れるでしょう。アメリカに日本の総理がものを申している姿は、マスコミにとって報じやすいことなのです。日本人が外交的に成果を収めることは少ないのですが、今回もまた同じ失敗が繰り返されようとしています。

 米民主党政権は、共和党とつながりの深い自民党と共に活動したくないのです。それを理解できない政権与党に問題があります。


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