ヒズボラがシリア内戦への関与を明言

2013.5.2


 読売新聞によれば、米紙ワシントン・ポストは4月30日、米政府高官の話として、オバマ大統領がシリア反体制派への武器供与を準備していると報じました。

 同紙によると、反体制派への武器供与は「数週間以内」に最終決定する見通し。シリア内戦への介入に反対するロシアの説得に努めるといいます。

 military.comによると、米陸軍参謀長、レイ・オディエルノ大将(Gen. Ray Odierno)が、シリアの化学兵器の使用疑惑がアメリカを中東で別の紛争に引きずり込む恐れがあるとして、シリア内紛のための訓練はしていないと言いました。

 「我々はアフガニスタンに派遣するために部隊を準備しています」と、オディエルノ大将は火曜日にドイツのヴィースバーデン(Wiesbaden)、クレイ・カーザーン(Clay Kaserne・第5軍団司令部の所在地)でのインタビューで言いました。「それが我々が予算をつけた者たちです。アフガンへ行かない他の部隊については、我々は今年の残りにそれらを訓練する予算を持ちません」。しかし彼は、必要になれば、陸軍はシリアへ派遣したり、この地域でアメリカの同盟を助ける準備をした部隊を持っていると言いました。予算削減の中、シリアに対応するための陸軍の即応体制は徐々に弱まるでしょう。

 BBCによれば、ヒズボラの指導者、ハッサン・ナスララー(Hassan Nasrallah)は、シリアにはアメリカやイスラエル、イスラム過激派の手に引き渡せない本当の友人があると断言しました。

 ナススラーはシリアの反政府派はアサド政権を倒すには軍事的に弱すぎると言いました。彼はヒズボラのテレビ局、アル・マナル(al-Manar)が放送した声明で話しました。

 BBCのアラブ情勢アナリスト、セバスチャン・アッシャー(Sebastian Usher)は、この声明で暗にヒズボラがシリアでの戦いに関与していることを確認したと言いました。シリアの反政府派は、ヒズボラの支援者、アサド大統領を助けるためにヒズボラが戦闘員を提供していると、長らく主張していました。「(反政府派の)大せいがレバノン人が住む村を占領する準備をしていました。だから、シリア軍へ考えられる、必要なすべての支援を提供するのは当たり前です」とナススラー氏が言ったとAFPは報じました。

 ヒズボラの指導者は殉教者を隠すことはしてこなかったと言いましたが、戦闘員の多くが殺されたという記事は嘘でした。彼はダマスカス南部にある、預言者マホメットの孫セイダ・ジナブ(Sayida Zeinab)の名を取ったシーア派の聖地が破壊されるなら、制御できない復讐が引き起こされるとも言いました。ナススラー氏は、国内の視聴者を安心させようとして、なによりもヒズボラはシリア内戦がレバノンに波及することを避けるのを望んでいると言ると、BBCの特派員は付け加えましたが、最近の戦闘に安心材料は少ないかも知れません。


 記事は一部を紹介しました。

 オバマ大統領とナススラー氏の発言のどちらが現実的かと言われると、オバマ大統領の方です。ヒズボラがどこまでシリア内戦に関与できるかは疑問ですし、ヒズボラがやっているのはレバノンにシリアの反政府派が侵入しないようにすることです。一方、アメリカはシリア政府が化学兵器を使ったと証明されれば、躊躇なく、反政府派に武器を提供するでしょう。それは過去の事例からも明らかです。

 オディエルノ大将の発言はさらに続くのですが、予算要求がらみの発言みたいなので、簡単に紹介しました。共和党からシリア内戦へ干渉するよう要求が出てきたので、その追い風に乗って、予算削減をできる限り回避したいという気持ちが出たようです。

 最近、政治的な動きの報道が増え、戦況に関する情報が少なくなっていますが、戦闘は確実に起きているはずです。そうした情報が入ってきたら、すぐに紹介します。


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