増え続ける化学兵器の証拠と証言

2013.5.17


 BBCによれば、シリア北部のサラケブ(Saraqeb・kmzファイルはこちら)を訪れたBBCの記者は、目撃者から、政府軍のヘリコプターが少なくとも2個の毒ガスを搭載した装置を投下したことを聞きました。

 4月29日、アレッポ(Aleppo)南西の町、サラケブは政府軍の陣地から砲撃を受けました。地元病院の医師は呼吸障害の人が8人いることを認めました。嘔吐している者、縮瞳の者がいる医師は言いました。マーヤム・カティブ(Maryam Khatib)という女性1名があとで死亡しました。BBCに渡されたビデオの多くは、この主張を裏付けますが、独自に確認されていません。

 攻撃現場で採取されたサンプルは、フランス、イギリス、トルコで分析されています。カティブ夫人の息子、モハメッド(Mohammed)は、母親を助けるために現場に駆けつけ、自らも負傷しました。「恐ろしくて、息が詰まる臭いでした。呼吸なんかできません。死ぬと思いましたよ。何も見えませんでした。3、4日間、何も見えませんでした」。

 カティブ夫人を治療した医師は、症状が有機リン中毒に一致し、サンプルが分析のために送られたと言いました。

 サラケブ郊外に着地した装置の一つは、目撃者の説明では、中に空の個体ケースがある箱状の容器でした。別のビデオでは、反政府戦闘員が装置の中に隠れていたという弾筒を持っています。目撃者は容器1つの中に2個あったと主張しました。別のビデオは、白い粉に囲まれた、地面の上にある弾筒の部品を示しました。現場と犠牲者から採取したサンプルがイギリス、フランス、トルコ、アメリカに分析のために送られました。

 元イギリスの統合化学・生物・放射線・核兵器・連隊の指揮官、ハミッシュ・デ・ブレットン・ゴードン(Hamish de Bretton-Gordon)は、サラケブの証言と証拠は不完全ながら強力だと言いました。サラケブとシリアでここ数週間に起きた同種の事件で、人々は負傷したり、死んだりして、それらの症状は、サリンや有機リン酸エステルの神経剤に見るとしているものです。ブレットン・ゴードンによれば、ダマスカス東部のアル・オテビヤ(al-Otaybeh)、ドウマ(Douma)に近いアドラ(Adra)、アレッポに近いシェイク・マクソド地区(Sheikh Maqsoud)の最近の攻撃で得られた証拠は、サラケブの事件と基本的に同じです。ブレットン・ゴードン氏は現場を訪問しておらず、どの証拠も分析していませんが、BBCが収集したものすべてに接触しています。


 記事は一部を紹介しました。

 ブレットン・ゴードン氏は、現地の反政府勢力が撮影した被害者や現場の映像をすべて見られる立場にあるようです。私もメディアが報じたビデオ映像の一つは、化学兵器による患者を撮影したものと考えられると、以前に書きました。化学兵器そのものの映像もあるのなら、いよいよ証拠が揃ってきたという感じです。ビデオ映像があり、サンプルの分析による裏付けがとれれば、シリア軍の化学兵器使用は否定しようがなくなります。

 つまり、それはアメリカを中心としたNATO軍が、シリア政府に対する実力行使を強化する段階に来たということです。

 ここで重要なのは、効果がある武力介入しか意味がないということです。他国やテロ組織からシリア政府に支援が続き、内戦を長引かせるだけの介入ならしない方がましというものです。まずは、ロシアと中国がどういう態度に出るかを確認しなければなりません。アルカイダからの支援はすべて断ち切らなくてはなりません。その上で、シリア軍を効果的に壊滅させる手段がとられる必要があります。反政府の実戦部隊へ偵察情報を提供することの他に、空爆によるシリア軍中枢への爆撃が必要でしょう。偵察衛星から得られた情報を提供することで、反政府軍は政府軍の先回りをできます。特に、化学兵器の貯蔵施設は、空爆ですべて破壊する必要があります。大統領を直接守っている精鋭部隊も、いち早く撃破したいところです。蛇の頭を狙い撃ちして、体は反政府軍に任せることです。夏の間に戦いを終わらせないと、難民問題がさらに深刻化します。


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