北朝鮮が移動したミサイルはKN08ではない

2013.4.5


 時事通信によると、菅義偉官房長官は4日の記者会見で「最悪の事態にも国民の安全をしっかり防衛できるような態勢で取り組んでいる」と述べました。

 菅長官は、北朝鮮がミサイルを日本海側に移動した状況について「日米韓の連携の下に全て掌握している」と語り、政府として移動を確認。防衛省は航空自衛隊や海上自衛隊による警戒監視を強化。小野寺五典防衛相は省内で記者団に「累次の威嚇状況について、しっかり情報収集に当たって対応を検討していく」と語りました。

 JNNによると、複数の韓国政府関係者は、北朝鮮が今月末までの間、日本海側と朝鮮半島西側の黄海側の一部の海域で船舶を航行禁止とする措置を出していると明らかにしました。これまで北朝鮮は、同様の措置の後にミサイルを発射した例があります。

 韓国軍関係者は、故・金日成主席の生誕記念日に当たる今月15日の前に、北朝鮮がミサイルを発射する可能性もあるとした上で、今回は最大射程3500キロ程度のムスダンを近距離で発射させるのではないかとの見方を示しています。


 記事は一部を紹介しました。

 安倍政権ののんびりぶりは相変わらずです。「累次の威嚇状況について、しっかり情報収集に当たって対応を検討していく」で、万一の場合に対処できるとは思えません。北朝鮮は「戦争をする」と述べ、日本の地名を具体的にあげて射程範囲にあると宣言したのです。その実行能力は甚だ疑問でも、国民に何の注意も与えないのは、どう見ても変です。「北朝鮮の脅威は、そこまで弱いのですか?」と私は言いたくなります。

 ムスダンなら日本列島を軽く越えて飛ぶ能力を持っているはずです。実際にそうかは分かりませんが、機体の大きさから、そのように分析されています。だから、日本海側と朝鮮半島西側の黄海に航行禁止区域を設けたのなら、その能力のごく一部だけのテストか、別の短距離ミサイルを発射するつもりだろうと考えるべきです。しかし、実際どうかは発射しないと分かりません。その場合、記者会見を開く前に、ミサイルは日本に着弾します。

 日本列島を越えていくような弾道は、以前起きたような日本での大騒ぎを引き起こし、北朝鮮が望んでいない結果を招きそうです。多分、今回はしないと、私は想像します。しかし、それではムスダンの能力を世界に知らしめることはできず、示威行為としても中途半端に終わります。

 北朝鮮の意図を知るためにも、航行禁止区域の正確な位置が知りたいですね。

 ここまで書いた時点で、聯合ニュースから、韓国国防部の金寛鎮(キム・グァンジン)長官が、国会国防委員会で開かれた業務報告・政策質疑で、東海岸に移動したミサイルについて、日本メディアで報じられた新型の長距離弾道ミサイルKN08ではないとした上で、「相当な射程距離を持つが、米国本土までは届かない」と述べたという記事が報じられたことを知りました。これなら、ムスダンか日本に届かない短距離ミサイルである可能性がより高まったと思います。ムスダンの打ち上げテストは明確に確認されていません。テポドン2号の1段機体のエンジンがムスダンのものともされますが、単体での飛行をどれだけテストしたのかは不明です。実験段階のロケットをいきなり実戦では使わないでしょう。北朝鮮がすることは理解できないことがあります。東海岸からミサイルを発射して、日本の東北地方上空を通過させ、太平洋に落下させるという示威行為をやるかも知れません。この場合、日本はミサイルを迎撃するのでしょうか。日本政府はこの重要な点について何も語っていません。


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