困惑させられる北朝鮮の戦争準備

2013.4.4


 昨日からの北朝鮮に関する報道をまとめると、戦争の始まり方としては、前例のないものになっています。

 朝鮮人民軍総参謀部が、米国の無謀な脅しは「小型化、軽量化、多様化した最新鋭核攻撃手段により粉砕される」だろうとの通告をアメリカに通告。

 朝鮮人民軍総参謀部は「現在の状況は戦争が起こるか起こらないかということではなく、すぐに起こるか、または明日起こるかという段階だ」と表明。

 中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられる物体を日本海側に移送させたことを米韓両国の情報当局が確認。

 開城工業団地の韓国人は帰国だけを認め、資材の搬入も認めず。現地では北朝鮮職員が軍服を着用し、税関に装甲車が配備。


 順番に北朝鮮の準備にコメントします。

 北朝鮮の核兵器はまだ十分なまでに完成しておらず、米本土を攻撃するだけの武器はありません。

 奇襲ではじめるべき戦争を、わざわざ「やるぞ」と相手に教える意味が分かりません。

 ムスダンはグアムくらいまでは届くと推定されていますが、そもそも、完成しているのかが疑問です。完成しているノドンミサイルでは、日本列島までしか攻撃できないので、アメリカを脅すためにムスダンを持ち出したわけです。

 開城工業団地はいつまで閉鎖を続けられるのか疑問です。北朝鮮は休業分についても給料の支払いを求めるでしょう。両国の関係が崩れたのは、韓国の責任だと主張するはずです。しかし、韓国は挑発には何も与えないという方針をすでに決定済みです。稼働しなかった分の賃金の支払いは拒否するでしょう。

 一連の北朝鮮の行動が脅しであることは言うまでもありません。彼らの目的は、米軍が演習のために、この地域に集結した武器を引き下げることを狙っているものと考えられます。

 ステルス爆撃機や空母などの武器に対して、北朝鮮は対抗手段をほとんど持ちません。演習にかこつけて、アメリカが攻撃を始めた場合、北朝鮮の軍事力では対抗手段がないのです。そこで、ここまで大騒ぎをしているわけです。大騒ぎをすればするほど、軍事力の格差をひどく気にしている北朝鮮の事情が露見することになるのですが、彼らはそこにはお構いなしです。

 アメリカの対応としては、もうしばらく増派を続けて、北朝鮮の反応を見る可能性が高そうです。ここで退いてやれば、北朝鮮はすぐに緊張を解くでしょう。しかし、さらに続けて、どこまで耐えられるのかを確認したり、何か新しい動きがあるかを確認するという手もあります。いますぐ退くと、北朝鮮が防衛に勝利したと宣伝をはじめるという点も気になります。

 ところで、安倍政権は、北朝鮮の脅しを存在しないかのように無視する方針ですが、これも誤った対応というべきです。

 人工衛星の打ち上げテストですら、航空機や船舶へ警告を出し、各機関、企業に警戒させたのに、北朝鮮が戦争だと叫び、彼らが核兵器や生物・化学兵器を搭載できると宣伝するミサイルを配置につけたのに、平時のままの生活を続けるというのは、明らかに筋が通りません。

 東日本大震災の影響がまだ続く最中に、弾道ミサイルが国内に着弾した場合、一体どうするのかということに対して、政府は国民に言うべき言葉を持つべきです。なにもしないで、国民栄誉賞の話題にすり替えて済ませるというのは理解できないことです。

 安倍政権が北朝鮮の脅しを無視すればするほど、テポドン2号の打ち上げ時の対応はミサイル防衛の正当化のためのプロパガンダで、本当の危機管理ではなかったことを露呈します。しかし、いまの日本にはそれを批判する政党もメディアもありません。変な危機管理が常識として通じる変な社会なのです。


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