ドイツ外相が化学兵器の証拠なしと発言

2013.4.30

 毎日新聞によれば、シリアのアサド政権による化学兵器使用の可能性を米国が指摘した問題について、ドイツのウェスターウェレ外相は27日、訪問先の西アフリカ・ガーナで「ドイツの現段階の情報では、そのような兵器を使用したとの証拠はない」と述べ、米国に根拠を示すよう求めました。

 ウェスターウェレ外相は一方で「化学兵器使用がレッドライン(越えてはならない一線)なのは確かだ」とも述べ、危機に対する認識については米国と同様と強調した。米国は今月25日、アサド政権が猛毒の神経ガス・サリンを使用した可能性があるとの分析結果を公表。イスラエルや英国も同様の見解だが、ロシアはドイツ同様、疑問を呈しています。


 記事は一部を紹介しました。

 これは興味深い報道です。しかし、アメリカとドイツは同じ証拠を共有しているわけではありません。ウェスターウェレ外相は「ドイツの現段階の情報では」とことわっており、両国の情報源が別であることを強調しています。今後、アメリカからドイツの証拠の開示があり、ドイツの専門家が検討すれば、結果は変わる可能性があります。

 省略しましたが、記事にはアメリカのイラク侵攻時に、イラクに大量破壊兵器の計画があるとしたアメリカの主張にドイツが反対したことも書かれています。しかし、この時の情報源は亡命したイラク人で、彼は待遇をよくするために偽の情報を提供しました。今回の情報源は土壌サンプルです。その出所は不明ですが、反政府派の手から渡されたものと考えられます。彼らがサリンを含む土壌を捏造するには、化学兵器部隊から離反したシリア政府軍兵士の協力が部隊規模で必要です。しかも、自分がサリンの被害に遭わないために、防護服を着用するなどしないと、こうした証拠は作り出すことができません。捏造できる環境は限られていて、証拠の信憑性は高いと考えられます。

 しかし、ここで友好国のアメリカの主張にも水を差すという態度は流石です。自国で確認できるまでは未確認を通すという考え方には好感が持てます。日本がフセインの大量破壊兵器計画を鵜呑みにして、アメリカを支持した過去を忘れることはできません。日本政府はこの種の事柄には普通、声明を出しませんし、記者たちも質問をしません。国民も意識すらしないので、内閣支持率にはいささかの影響も与えないのです。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.