北朝鮮はどう幕を引くつもりか?

2013.4.15


 聯合ニュースによれば、北朝鮮の金正恩第1書記が公式の場に登場する回数が急減しています。今月1日の最高人民会議以降、14日現在までの2週間、公の場に姿を現していません。

 北朝鮮の最高指導者が公式の場に2週間姿を見せないことは特段異常なことではありません。昨年7月には24日間、同10月には15日間、姿を現しませんでした。今年に入ってからは朝鮮半島の緊張が高まった3月以降、活発な活動をみせていました。今年1月から今月1日までの91日間に計43回の公式活動を行いました。3日に1回の割合で活動していることになる。特に先月は1日に3回の公式活動を行ったり、4日連続で軍部隊を訪問することもありました。

 金第1書記が突然姿を見せなくなったため、北朝鮮内部でのクーデター説や金第11書記の後見人とされる張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長の監禁説など様々な憶測が飛び交っています。ただ、韓国情報当局は14日に「確認できない説だ」と一蹴し、金第1書記の身辺に特異な動きは見られないと明らかにしました。

 当局は故金日成主席の誕生日の4月15日に注目しています。祖父である金主席の威光を統治に利用している金第1書記は、2月16日の故金正日総書記の誕生日に続き、今月15日に金主席の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を参拝するとみられます。

 危機をあおってきた北朝鮮が局面打開に動き出すのではないかと注目を集めています。韓国政府は今月11日に統一部声明で事実上、対話を提案し、12日にはケリー米国務長官が北朝鮮との積極的な対話の意思を明らかにしており、北朝鮮も局面打開を模索し始めたとのではないかとの観測も出ています。

 北朝鮮専門家は15日以降の北朝鮮の動向に注目します。この専門家は「韓米の対話提案で北朝鮮にとってそれなりの名分が生まれた。自分たちの圧迫に米国と韓国が屈服したと内部的に宣伝できる」と説明しました。また、緊張緩和を求める中国を意識せざるを得ないため、強硬姿勢を続ければ体制維持に悪影響を及ぼすと分析した。

 ソウル大学統一平和研究院のチャン・ヨンソク先任研究員は「北朝鮮側の立場では依然、名分が不足している」と分析します。「北朝鮮が今後、局面の転換に乗り出すよりは、緊張醸成を続けて、うまくいけば緊張の水位を少し調整するというレベルで状況を整理する可能性がある」との見通しを示しました。


 記事は一部だけを紹介しました。

 北朝鮮の元首が時々姿を消すのは、この記事にあるように、時々起きることです。アメリカや韓国と事を構えている時は、暗殺やステルス機による爆撃も含めて警戒しているようです。

 それよりも重要なのが、北朝鮮がどの辺を落としどころに考えているかです。韓国が対話を提案し、アメリカがそれを後押しする態度を示しましたが、北朝鮮は無視の構えです。しかし、北朝鮮が最も欲しているのは、何らかの成果をあげることです。

 北朝鮮にとっては残念なことに、どの国も北朝鮮が戦争をすると脅しても本気にしませんでした。ムスダンを引っ張り出してきても、「試射」としかみなしてもらえず、オバマ大統領からも「ミサイルはアメリカまで届かない」と言われてしまいました。実際、テポドン2号は軽い人工衛星を軌道上まで打ち上げた実績しかなく、核爆弾に匹敵する重さの模擬弾頭による打ち上げ実験はやっていません。これで、アメリカを攻撃できると言っても無理というものです。

 「自分たちの圧迫に米国と韓国が屈服したと内部的に宣伝できる成果」が北朝鮮の落としどころであることは間違いがありません。今日は15日で、重要な国家的行事があるため、大きな決定はくだされそうにありません。さらに様子を見て、今月末までの適当な段階で、幕引きをはかることが一番ありそうな展開です。

 しばらくすれば、支援を中断している中国も、また物資をくれると北朝鮮は踏んでいます。

 しかし、ここまでやったら、北朝鮮は来年のネタを一層大きくする必要があります。何度も自殺未遂を繰り返し、最後に本当に死んでしまった太宰治を思い起こすような展開に思えるのですが。


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