シリア軍がホムス奪還作戦を開始

2013.3.5


 シリア内乱で戦況にいくつかの進展が出ています。

 alarabiya.netによれば、シリアの反政府派はラッカ市(Raqqa)を占領し、現地の政府治安責任者を捕らえ、アサド大統領の父、ハーフェズ・アル・アサド(Hafez al-Assad)の像を倒しました。(この記事にはビデオ映像がついています)

 人権団体「the Syrian Observatory for Human Rights」のラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdel Rahman)は「ここは反政府派がこうした前進をなした最初のシリアの州都です。彼らは現在、軍治安部とバース党本部を含めた、いくつかの政治の場所を除いて、ラッカ市のほとんどの支配を手にしました」と言いました。この団体によると、アル・ヌスラ戦線の戦士は、トルコ国境近くの
ユーフラテス川付近の戦略的位置にある北部の都市をめぐる戦いで反政府派グループと共に戦いました。警察本部長が殺され、治安当局者2人が反政府派に拘束されました。「反政府派は国家治安責任者をトルコへ連れて行きました」とラーマンは言い、国境検問のタル・アル・アビアッド(Tal al-Abyad)を含めたラッカからトルコへ続く道路が反政府派の支配下にあることを指摘しました。土曜日にラッカの戦闘で反政府派26人が殺されました。

 ラッカにはかつて240,000人の住人がいましたが、内紛が始まってから800,000人がシリア国内の別の場所に避難しています。ここ数週間で、反政府派戦士は街へ通じる政府軍のすべての補給路を遮断し、検問所とその他の政権の拠点への攻撃を強めていました。

 military.comによれば、反政府派はアレッポ(Allepo)、ホムス(Homs)、デリゾール(Deir el-Zour)、ダマスカス郊外を支配しています。彼らは北部の農村地帯をも支配しています。過去数週間で政府軍はアレッポ国際空港近くの幹線道路に沿った村と町をいくつか奪い返しました。

 政府系新聞は反政府派が土曜日に起きた、アレッポの警察学校をめぐる戦いで警察官115人を殺し、別の50人を負傷させたと言いました。日刊紙「Al-Watan」は、テロリストが大虐殺を行ったと報じました。匿名のシリア政府当局は報道を否定し、政府軍兵士27人が殺され、7人が行方不明だとしました。人権団体は少なくとも政府軍兵士120人、反政府軍兵士80人が死亡したと言いました。

 土曜日に、シリア軍はアレッポの政府が支配するハマ(Hama)とアレッポ国際空港をつなぐ道路がある地域を確保したと言いました。人権団体は、反政府派は月曜日に空港近くのアッサン橋(Assan)を破壊したと言いました。ビデオ映像は「神は偉大なり」と合唱の中で、破壊された橋と黒煙を映しました。ビデオは本物に見えました。

 BBCによれば、約40人のシリア兵とイラク兵数人がイラク西部で死亡したとイラク政府当局は言います。

 彼らは週末に反政府派の攻撃を逃れるために越境したグループでした。彼らはガンマンに攻撃され、アンバル州の国境へ追い返されました。週末に、反政府派がこの地域で攻撃を始めると、シリア軍兵士と政府職員のグループが、ニナーワー州(Nineveh province)のヤールビヤ(Yaarubiyeh・kmzファイルはこちら)検問所を通ってイラクに入りました。彼らは、アカシャット(Akashat)で待ち伏せられて、さらにアンバル州にある南のアル・ワリード(al-Waleed)国境検問所で捕まりました。「待ち伏せをしたガンマンたちは彼ら40人を殺害し、車列を警護していたイラク兵数名を殺しました」と当局者は言いました。ガンマンたちの身元は不明です。彼らは攻撃の準備を周到に整え、IED、自動火器、RPGを持っていました。

 イラクとシリアは600kmの国境を共有し、イラク政府はシリアの暴力がイラク領内に及ぶ懸念を表明していました。アンバル州はスンニ派のイスラム教徒が支配していて、2ヶ月以上、彼らを過小評価しているとシーア派主導の政府に抗議しています。

 alarabiya.netによると、シリア軍は月曜日にホムスを占領するために大規模な攻撃をはじめました。

 人権団体は日曜日にシリア全土で264人(政府軍兵士115人、反政府軍兵士104人、民間人45人)が殺されたと言います。「これはここ数ヶ月で最悪の戦いで、襲撃者の間には多くの死傷者が出ました」と人権団体はさらなる犠牲者の詳細を提供せずに言いました。

 政府系民兵に支援された政府軍兵士は、旧市街地、ジョレト・アル・シーア(Jouret al-Shiah)、カリデヤ(Khaldiyeh)カラビーズ(Qarabees)を含む周辺地域を含め、反政府派が支配するホムスの中心部を攻撃しました。

 ラッカでは、ダラ(Dalla)環状交差点と移民・旅券センター周辺で戦闘がありました。週末に政府軍は、収容者を解放したアル・ヌスラ戦線と他の反政府軍グループが占領するラッカの中央刑務所に対して空爆をはじめました。

 アレッポでは、歴史的建造物ウマイヤド・モスク(Umayyad mosque)を、数日間反政府派が占領した後で、政府軍が取り戻そうとしました。武装勢力は空港を占領する活動を強め、ミニグ空軍基地(Minnegh air base)への攻撃をはじめました。

 地域調整委員会は、イラクとレバノンのシーア派「ヒズボラ」が、反政府派の場所を攻撃して、政府軍に直接的な支援をしていると非難しました。反政府グループは日曜日に、イラク政府をシリアへ介入し、シリア国民を攻撃していると主張しました。イラク政府はアサド大統領の退陣を要請することを避けてきました。ヒズボラは2年間のシリア内戦にいかなる役割をもしていないと主張しています。

 月曜日、サウジアラビアの外務大臣、サウド・アル・ファイザル王子(Prince Saud al-Faisal)は、ジョン・ケリー国務長官(Secretary of State John Kerry)との会談の後で、シリア政府に武器禁輸を行うことを要請し、アサド大統領はシリア全土で支配を失ったと言いました。

 ファイザル王子はシリア軍の暴力的弾圧に対してシリア国民が自衛権を有することを支持しました。彼は反政府派を武装させる必要性に言及し、シリアの反政府派への国際的な支援は人道支援だけに制限されるべきではないと言いました。

 カタールやサウジのような国から反政府派へ送られている武器に関する報道について尋ねられると、ケリー国務長官は「穏健派の反政府派は武器が彼らに与えられて、間違った者の手に渡らないようにする能力があります」と答えました。しかし、「いくつかの武器が間違った者の手に落ちないという保証はありません」と彼は付け加えました。


 記事の一部は省略しました。

 これらの記事で驚くのは、ホムスが反政府派に支配されているということです。まだ、そこまで戦況は進んでいないと思いました。依然として競合状態にあるのでしょうが、反政府派が占領に成功した点は大きな進展です。

 その他の展開も、反政府派に有利に動いているように見えます。ラッカはまだ完全に占領できておらず、祝賀会の最中に砲撃があったといいます。それでも、完全占領は時間の問題でしょう。タル・アル・アバドはトルコ領のアクチャカレ(kmzファイルはこちら)のシリア側の町です。ラッカからここまでに至る道路が安全だという点も大きな証拠です。昨年10月にはシリア軍が撃った砲弾がトルコ領内に着弾して、トルコ軍が反撃する事件が起きています。

 それから、支援国から反政府派に武器が援助されていないらしい点も驚きです。すでに報道で、武器が渡っていることは間違いがないと思っていました。昨日の記事で、イドリス准将が外国から武器は一切受け取っていないと述べていましたが、それは本当なのかも知れません。

 なにしろ、シリア内乱では情報が少なすぎるのが困りものです。


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