北朝鮮の対上陸演習は失笑もの

2013.3.28

 聯合ニュースによれば、北朝鮮軍が25日に朝鮮半島東海岸の江原道・元山一帯(kmzファイルはこちら)で、金正恩第1書記が見守る中、大規模な合同訓練を実施したと、韓国軍筋が26日、明らかにしました。

 同筋によると、上陸部隊と陸上部隊間の攻防訓練も行われました。多数のロケット砲やけん引砲が用いられましたが、短距離ミサイルは発射されませんでした。一方、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は25日、金第1書記が東海沿岸で、朝鮮人民軍第324、第287大連合部隊と海軍第597連合部隊の訓練を参観したと報じました。金第1書記は「敵が絶対に上陸できないよう、強力な砲火力で徹底的に払いのけなければならない」「敵との対戦で人民軍による見せしめを示し、仇敵を一人残らず海に叩き込め」と指示しました。


 このところ、連日、戦争をすると言い続けている北朝鮮がやった演習が、江原道・元山一帯での対上陸演習ということです。記事には「上陸部隊と陸上部隊間の攻防訓練も」と書いてありますが、多分やったのは対上陸演習だけでしょう。多分、海軍第597連合部隊が仮想敵の役を演じて上陸作戦を行い、朝鮮人民軍第324、第287大連合部隊が海岸線で阻止するというシナリオでしょう。

 それにしても、北朝鮮の意図がさっぱり分かりません。これは侵攻作戦ではなく、防衛作戦の演習です。攻撃するぞと言いながら、それとは反対の防衛のための訓練をやってみせているのです。

 元山市には大型船が停泊できる港があり、海岸には空軍基地もあります。上陸部隊は近くの海岸に侵入して、市を占領し、港と空港を補給の経由地として活用できます。上陸作戦を考える上では都合がよい場所ではあります。しかし、平壌がある西海岸川の反対、東海岸側にあり、38度線から100km離れた場所と、適当に刺激を避けた場所でもあります。言葉とは裏腹に、韓国と本当の戦争状態に入らないように、北朝鮮が行動を慎重にコントロールしている節が窺えます。ここが失笑ものだと思うのです。やるのなら、空陸合同の侵攻作戦の演習だと、私は思っていました。外には「攻めるぞ」と脅し、内には「しっかり守れ」と命じるとは。

 余談ながら元山港は、あの「万景峰号」の母港でもあり、GoogleEarthで見ると、港に停泊しているのが確認できます。

 それから、上陸阻止のためには、陸上部隊だけでなく、沿岸防衛の海軍部隊の訓練も欠かせないはずですが、これは観測されなかったのでしょうか?。北朝鮮には大量の魚雷艇があります。これで接近する船舶への特攻をかけるはずと思っていましたが、その訓練はやらないのでしょうか。


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