アムネスティがシリア内戦の虐殺レポートを公表

2013.3.15


 military.comによれば、人権団体はシリアの反政府派が繰り返し、捕らえた兵士と政権の情報提供容疑者を殺害したと木曜日に言いました。

 アサド政権による虐待は、特に禁止されているクラスター爆弾を含む兵器による民間人への攻撃は、より致命的、組織的、広範でしたと、人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は言いました。

 こうした攻撃の頻度と規模はここ数ヶ月増加したと2つの報告書は言いました。報告書は政権側と反政府側の行為を解説しました。過去の政権の虐待に関する報告書は広く報道されました。

 しかし、西欧で大衆の同情を受けている反政府戦士もまた責任を負わなければならないと、アムネスティのサリナ・ナセル(Cilina Nasser)は言いました。「彼らがやっていることが間違っていて、彼らが行った虐待の一部は戦争犯罪になるということを知るべき時です」。

 米国務省広報官、ビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)は、反政府派による人権侵害に抗議し、行動の基準を守るよう要請しました。「我々はそれが我々の支援の条件だとしました」。

 反政府の主流グループ、自由シリア軍は捕らえた兵士を殺すことを否定しました。「我々はそれが起きていることを否定はしませんが、彼らの父や親族が政権に殺されているため、復讐をする者たちによる、個々の事例はあります」とトルコに拠点を置く自由シリア軍のバッサム・アル・ダダ(Bassam al-Dada)は言いました。「こういうことは戦争ではどこででも起こります」。自由シリア軍は戦闘員の行動規範を導入しましたが、それは多くの武装グループ、特にアルカイダにつながり、主要な戦線を支配するジャバット・アル・ヌスラ(Jabhat al-Nusra group)に影響を与えていません。

 自由シリア軍とつながる一部の反政府グループは、責任を問われずに冷酷な感覚で人々をその場で殺していて、死者の数は反政府グループの支配下になった町と村で増加し続けています。

 多くのアマチュアビデオ映像がここ数ヶ月に出てきて、そうした殺害とその後をとらえていました。いくつかの映像はとらえられた男たちが銃弾の雨の中で殺されていました。3月9日に、先週反政府派が占領したラッカ(Raqqa)で撮影されたとされる映像は、血の海の中、街角に横たわる3人の死体を映しました。死者の1人は顔を伏せ、両手は背中で縛られていました。ナレーションは「軍用犬が時計のある広場で処刑を行いました」と言いました。

 イギリスに拠点を置く人権団体「the Syrian Observatory for Human Rights」のラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdul-Rahman)は、こうしたビデオ映像を多数受け取り、反政府軍兵士の行為について懸念が高まっていると言いました。「人権は人権なのです。差別をしてはいけません」。ラーマンと「the Human Rights Watch」のピーター・ブーケアート(Peter Bouckaert)は、その場での処刑は一般的のようだと言いました。「反政府派の虐待は政権が行う処刑とその他の残虐行為のレベルに比較すると色あせますが、それは深刻な懸念です」「我々は捕まえた兵士と政権支持の容疑者の処刑はまったく一般的な事例だと見ています」

 調査者たちは、ビデオ映像は捏造でき、目撃者の証言とその他の補強証拠が必要だと認めます。反政府軍当局者のアル・ダダは、捕虜を殺している反政府軍を映したビデオは故意に加工され、一部は離反者や反体制派を処刑している政府軍兵士を映していたと言いました。彼は詳細を述べたり、実例を提供したりはしませんでした。

 アムネスティは、ここ数ヵ月間で最も衝撃的なビデオ映像を調査したと言いました。その映像はデリゾール(Deir al-Zour.)で8月に反政府派に誘拐されたシリア軍将校2人の首をはねたように見えました。ナセルは調査員は2人の男、フアード・アブド・アル・ラーマン大佐(Col. Fuad Abd al-Rahman)と、イズ・アル・イン・バドル大佐(Col. Izz al-Din Badr)の家族と接触したと言いました。親族は、オサウド・アル・タウヒッド(Osoud al-Tawhid)と名乗る誘拐犯が誘拐の直後に家族に連絡し、身代金を要求したと言いました。交渉が行われましたが、結局、誘拐犯は2人が殺されたと家族に連絡しました。殺害の映像は11月に表出しました。ナセルはビデオ映像が本物だと考えていて、家族が殺害された男性を特定したことを指摘しました。彼女はデリゾールの目撃者が殺害が行われたことを確認し、場所を教えました。別のシリア人はビデオの中の者たちが現地の方言を使っていることを確認しました。

 その場での処刑は紛争はじめから増加していたとアムネスティは言いましたが、どれだけの者がその方法で殺されたかを見積もることは不可能です。ダマスカス郊外のドーマ(Douma)の医療従事者は、2011年夏には2週間に1体の死体を回収していましたが、2012年の夏までにこの数字は数日間へと増加しました。

 ナセルは現地の反政府指揮官が昨年夏に政府軍が空爆を激化した時、その場での処刑が増加したと言うと言いました。「戦場では、彼らはとらえた兵士が彼らの足を遅めると感じ、彼らを殺します」と彼女は言いました。政府の行為に関するアムネスティの2番目の報告書は、政府軍がここ数ヶ月で民間人が多い地域への無差別の空爆と砲撃を強めたと言いました。政府軍が使用する兵器には、非誘導型爆弾、弾道ミサイル、クラスター爆弾があり、国際人道法の最も基本的な原則をまったく無視していると、同団体は言いました。

 ここ2週間で、アムネスティの調査員は北部シリアの反政府派支配地域を訪問し、政府軍の攻撃で死亡した310人以上(子供157人、女性52人)の人々を数えたと報告書は言いました。これはアレッポへの弾道ミサイルで殺された人160人を含みます。政府軍は軍事的目標がこの地域にないのは明らかなのに、民間人を直接攻撃するか、無差別に攻撃していると、同団体は言いました。

 alarabiya.netによれば、フランスのフランソア・オランド大統領(President Francois Hollande)は木曜日、シリアの反政府軍を助けるために武器禁輸を解除するようにヨーロッパの指導者に要請しました。

 ロシアを含めた国々がアサド政権に武器を提供している点を指摘して、この問題がブリュッセルサミットの議事日程にないにも関わらず、オランド大統領はフランスはヨーロッパのパートナー国に、禁輸を終わらせて情勢を変えることを確信させなければならないと言いました。いくつかのヨーロッパ諸国は反対し、現場の武器の総量を増やすことはシリアの内紛をエスカレートさせると警告します。

 フランスとイギリス両政府は、禁輸に関する議論を要求することになっています。禁輸は欧州連合の外務大臣によって、2月28日に3ヶ月間延長されました。2月の会談で、大臣たちは、非致命的支援や訓練を武装勢力に提供できるようにするために禁輸を緩和することに同意しました。


 シリア内戦での虐殺は想像を超えた域に達しており、斬首はもはや当たり前の状況になっています。それも、子供にとらえた敵の首を切らせている映像すら公開されています。下の映像は、少年が男の首を切断するところが含まれています。ビデオの説明には今年2月19日、ホムスでの出来事と書かれています。衝撃の強い映像ですので、見たくない人は再生しないでください。

 なぜ、こんな残虐なことをするかといえば、政府軍が幼児を容赦なく虐殺しているからです。インターネット上には、爆撃などで殺された幼児の死体の映像が多数アップロードされています。

 こうして復讐の連鎖が止まらないのが、現在のシリアの状況です。復讐を基本とする社会秩序では、こうした事態は常に起こり得ます。

 まして、イスラム教国では、男の子は大人たちと同じように、銃を手にして戦うものだと信じています。大人たちが「家族や友達を殺した悪人を捕まえたから、お前が正義を下せ」と言えば、普通の男の子は死者やアラーの神を喜ぶと思って虐殺を行います。それが国際人道法に反することは知りもしません。

 報告書レベルでは、事実関係が確認、証明できるものだけを扱うので、インターネット上に流れている無数の残酷なビデオまでは取り上げません。映像の多くは事実でしょうが、間違いないものと確認することができないほど多いのです。

 欧州連合が武器禁輸緩和に動いたことで、今後、反政府派の戦力は増すでしょう。武器の提供先を穏健派の自由シリア軍に限定することで、政府軍相手の戦いに勝ち、その後は、いまは味方でも、その後は敵に転じかねないアルカイダ系武装グループとの戦いで優勢を保つことができます。武器がアルカイダにわたる危険はありますが、戦争はもともと常に危険なものなのです。


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