核実験で放射性希ガスは検出されず

2013.2.16


 北朝鮮が行ったとされる核実験に関して、その後の大気調査で、その痕跡が発見されていません。

 朝鮮日報によると、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)、韓国原子力安全技術院(KINS)のいずれも、15日までに希ガス元素のキセノンが検出されないとしています。

 毎日新聞によると、自衛隊は、日本列島周辺で航空機を計19回飛行させ、放射能ちりの採取を行いました。16日以降も1日3回、採取作業を継続します。これとは別に、愛知県沖の上空で、実験の有無や核爆弾の原料を判断する材料になるガスの採取を試みましたが、分析結果は出ていません。


 地下核実験では、大気中にキセノン133が放出されるため、実験が行われたことを検証するために使われます。クリプトン88も同じ目的で使われています。キセノンは放射能が半分に減る期間である半減期が5日程度、クリプトンは3時間と短時間なので、もっぱらキセノンが判定に使われます。2006年の1回目の核実験ではカナダ北西部でキセノンが検出されました。

 地下核実験は検証が難しいこともあって、かつては、地震波にみせかけるために複数回の爆発を起こして、自然な地震にみせかける工作が行われたほどです。

 今回の核実験も、本当に行われたかどうかは極めて疑わしいといわざるを得ません。急速に核爆弾を小型化したという話や、年内にさらに核実験を行うという発表も、通常の核開発の常識とは食い違っているように思えます。

 38north.orgによれば、今回の核実験は行われたものとしながらも、北朝鮮はおそらく、ICBMに核弾頭を搭載することはできないでしょうが、さらに努力と時間を積み重ねれば、そうした弾頭を開発することに、多分成功します。さらなる地下核実験は、さらに洗練された核兵器を生産するのを助けるだろうとしています(関連記事はこちら)。

 国際社会は北朝鮮が核爆弾の開発に成功した場合と、成功していない場合の両方を想定して対応しなければなりませんが、現段階では、本当に実験に成功したとは私は考えません。


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