南スーダンの停戦は不透明のまま

2013.12.28


 BBCによれば、南スーダン政府は反政府軍との即時停戦に合意したと、ナイロビで行われた東アフリカの指導者の会議はいいます。

 サルバ・キール大統領(President Salva Kiir)の政府からの誓約を歓迎し、彼らは反政府軍の指導者、レイク・マシャル(Riek Machar)に同じようにするよう訴えました。しかし、マシャル氏はBBCに停戦条件が適当ではないと言いました。彼は彼の同盟者2人が釈放されたものの、その他の9人も釈放するよう要求していることを確認しました。クーデターを計画したことで訴追された11人の政治家の釈放は反政府派が交渉につく鍵となっています。

 上ナイル州(Upper Nile State)のマラカル(Malakal)で起きた最近の戦闘で、少なくとも1,000人が死亡しました。南スーダンでは121,600人以上が難民となり、約63,000人が全土にある国連施設で避難しています。

 キール大統領側から敵対行動を止めるという確認は取れていません。ディンカ族の彼は、ヌエル族の元副大統領マシャル氏(Mr Machar)と権力闘争をしています。

 東アフリカ諸国の指導者たちはケニヤの首都ナイロビで会談を開き、南スーダンでの暴力による政府転覆を受け入れないと言い、南スーダン政府と反政府派が4日以内に会合するように要請しました。

 キール大統領はナイロビでの会合には参加しませんでしたし、マシャル氏も代表を送りませんでした。金曜日の朝、キール大統領に会ったあと、米特使のドナルド・ブース(Donald Booth)は「彼は全土で敵対行動の休止を手配していることを確認しました」と言いました。8人の政治家の釈放についても言及しました。「我々は拘束された3人を除く、他の者たちがすぐに釈放されると大統領が言うのに勇気づけられました」。

 マシャル氏は衛星電話でBBCに、彼は話し合いの準備があるが、いかなる停戦も両者の代表団による交渉と、それを監視することに合意するメカニズムが必要だと言いました。マシャル氏は南スーダンの反政府軍全体の忠誠を得ていると言い、11人全員の釈放を要求しました。

 12,000人が国連施設に避難するマラカルでは、矛盾する報告と共に、今週戦闘が続いています。首都ジュバにいる軍広報官、フィリップ。アグア(Philip Aguer)は、反政府派は打倒され、政府軍が完全に掌握していると言いました。しかし、ユニティ州にいる反政府派公報、モーゼス・ルアイ・ラト(Moses Ruai Lat)は、マラカル全市を反政府派が支配していると言いました。

 地域のラジオ放送「Radio Tamazuj」の報道によると、政府軍は反政府兵士を金曜日に市から追い出し、彼らを戦車で砲撃しました。砲撃で多くの家屋が破壊され、戦車の砲撃はそれらの一棟の中の家族4人を殺害し、別の家からは3人の死体が見つかりました。市内で戦闘の犠牲者がマラカルの州病院に溢れたと、支援団体「国境なき医師団」は言いました。ジョングレイ州で「国境なき医師団」は、ボル(Bor)から治療を求めて3日間歩いた銃弾の犠牲者を治療しました。

 戦闘は政府収入の98%を占める石油生産に影響を及ぼしています。国連安全保障理事会は、国連平和維持軍の兵数をほぼ二倍の12,500人にすることを可決しました。


 記事は一部を紹介しました。

 停戦が報じられたものの、目処はまったく立っていません。その理由は反政府派が産油地帯を押さえたからです。停戦すれば、政府側は産油地帯を引き渡すように反政府派に要求します。当然、反政府派は引き渡しを拒むでしょう。ここは南スーダンの富のまさに中枢なのです。ここを政府に渡すことは、反政府派の経済収入を奪い、政府軍に打倒されることを意味します。政府軍は産油地帯を力尽くで反政府派から奪わなければならないのです。

 前から述べており、シリアでもその通りに進行しているように、戦いの決着が着く前の停戦は極めて難しいのです。もちろん、国連や周辺国はそれを仲介しようとし、それは当然の成り行きです。しかし、多くの場合で、この段階での停戦は失敗する場合が多いのです。交渉のためとして、一時的な停戦が実現するにしても、それは新しい戦いのための準備期間くらいにしかなりません。

 人間は愚かで、多くの血を流した後でないと、結果を認めようとしないのです。

 国際社会がいま陥りやすい問題は、南スーダン内戦に肩入れすることで、シリアでの失敗を忘れようとすることです。難民が出ているとはいえ、シリアと比べればものの数ではありません。困難に直面したとき、人間は目を逸らして、別のことに集中したがるものです。そういう悪癖が出ないかが気になります。目の前の危機はシリアであり、南スーダンはその次です。

 ところで、韓国軍は自衛隊から提供された弾薬を自衛隊に返却する方針に変えたようです。韓国軍は日本政府がこれを政治カードにしようとしていると感じた上に、安倍総理の靖国神社参拝が続いたことから、不適切な要請だったと感じたのでしょう。これに対して、菅義偉官房長官は不快感を表明しているようですが、この程度で腹を立てているようでは危機管理などできません。それよりも、27日に予定されていた小野寺五典防衛大臣とヘーゲル国防長官の電話協議が延期された方が大問題です。しかし、安倍政権は失態を失態と感じていないようです。南スーダンでは内戦が続きそうなのに、駐屯する自衛隊部隊をどうするかも、もっと重要な問題なのですが。


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