ベイルズ事件の担当検事が語る

2013.11.9


 military.comによれば、ロバート・ベイルズ3等軍曹(Staff Sgt. Robert Bales)が起こした虐殺事件を担当した検事が、裁判についてコメントしました。

 アフガニスタンで16人を殺した米兵が仮釈放のない終身刑の判決を受けた時、法廷にいた被害者の家族は激怒しました。彼らはベイルズ軍曹に死刑を望みました。

 主任検察官のジェイ・モース中佐(Lt. Col. Jay Morse)はインタビューで、この訴訟は、アフガンからの撤退のために、犯行現場へ限定的なアクセスしかできず、大きな壁に直面し、これは早急に解決されるべきだと言いました。事件の犠牲者を満足させるべき検察官にとって、彼らの反応は対処しがたかったが、理解しうるものでした。「私は彼らが完全に満足したとは思いません」「私は彼らがベイルズ軍曹が文字通り死刑にならなければ、完全に満足しないと思います」。

 裁判のためにルイス・マッコード合同基地へ飛んだ犠牲者と親族は動揺しました。「私は彼の母親が泣こうとして、なんとかしてベイルズのところへ行こうとしたのを見ました」と、首を撃たれたハジ・モハメッド(Hajji Mohammad)は言いました。「我々はどうなるんです?。我が家のメンバーは実際に死んだのですよ」。

 モース中佐は、数点の困難な要素を挙げました。

 地域が不安定なために、陸軍捜査官が犯行現場に到着するのに3週間かかりました。この遅れは、証拠収集の信頼性を不確実にしました。

 目撃者へのアクセスも米軍のアフガン撤退のために不確実でした。

 注目を集めた裁判は3年以上に及び、2014年以降の裁判で目撃者の存在を保証できるかは定かでないと言いました。

 死刑判決を受けた二ダル・ハサン中佐(Maj. Nidal Hasan)がフォート・フッド基地で起こした事件(2009年)では、事件後から裁判まで封鎖され、大勢の被害者が証言できました。

 死刑が関係する軍事裁判は、同種の刑事裁判よりも長引くことが多いものですが、モース中佐は、それは彼の考えの中にはないと言いました。現役兵士は1961年以降は死刑になっておらず、過去30年間の死刑判決は撤回されるか、猶予されました。

 ベイルズ事件の担当になった時、モース中佐は3つの目標を書き留めました。

  • ベイルズを有罪にする
  • 事件の被害者を満足させるか、法的プロセスを理解させ続ける
  • あらゆる重大な間違いを避ける

 
 「私は自分を特定の判決に縛り付けたいとは思いませんでした。なぜなら、検察官として、それは私の手にはないからです」「我が手にあるのは、私に可能な最良の可能性がある裁判を行うことです」とモース中佐は言いました。

 「私は、我々がこの事件を適切に扱ったことがいかに重要かを人々が理解してほしいと思います」「私は結果に満足しています。結果はよかったと思っています」。


 記事は一部を紹介しました。

 被害者の家族はモース中佐のコメントに納得しないでしょう。「米軍ではなく、タリバンに頼めば、ベイルズは処刑できた」と思ったかも知れません。

 米軍で軍人の死刑は希である上に、ベイルズは素行不良の軍人ではなく、功績もあることが、終身刑で済んだ表向きの理由です。軍法の世界では、こういう意見が正当なのです。

 しかし、本音の部分では、やはり、外国人への差別意識を指摘せずにはいられません。自国民より外国人は一等、人権のレベルを低くしないと、外国を攻撃するのが任務の軍隊はやっていけないのです。

 軍事裁判の例でも、軍は被害者に一定の配慮をみせるものの、主犯を有罪にするために、共犯者と司法取引をして証拠を集める場合が多く、判決は被害者を満足させるものにはなっていません。

 これは構造的な、解決できない軍隊の欠陥なのです。スポーツ選手と審判を兼任できないのに似ています。

 このように、軍にからむ法律は一般の法律とは違う側面もあります。最近、日本では、国家安全保障や自衛隊に関係した法改正の議論が活発化しています。この問題を考える上で重要なのは、米軍の軍法を参考にするのが手っ取り早いということです。旧軍の軍法は旧憲法の下で制定されており、必ずしも、現代には適合しません。こういう問題に白紙であたると、結局、政府の言うことだけが本当らしく見えてしまいます。だから、参考資料として、条文や判例をご覧になることを勧めます。


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