化学兵器の完全破壊を疑うアメリカ

2013.11.7


 alarabiya.netによれば、米政府は国際化学兵器監視機関へのシリアの化学兵器に関する宣言を強く疑っていると、アメリカの国連大使は火曜日に言いました。

 サマンサ・パワー特使(Samantha Power)はアサド大統領に対処した経験はアメリカを懐疑的にしたといいました。アメリカの専門家は化学兵器禁止機関(OPCW)へ提出された700ページの宣言を研究しており、その正確さをチェックしています。

 匿名の米当局者は、米政府はシリア政府が備蓄の一部を保持しようとすることを懸念していると言いました。「シリア政府の特定の一派が化学兵器の備蓄を保持したいと望む若干の兆候があると言いました。しかし、当局者は、米政府はOPCW査察官を完全に信頼し、いかなるシリアの義務不履行も外交チャンネルを通じて対処されると言いました。別の当局者は「シリアが完全に化学兵器を破壊しないと考える当局者が一部にいます」と言い、他の者たちは「起きることに慎重ながらも楽観的です」と言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 具体的な証拠は出ていないものの、アメリカはシリアが完全に化学兵器を破壊するかどうかを疑っているという話です。過去に収集したデータと、宣言の中身を比較し、欠けている部分がないかを探しているのだと思われます。

 イラクのサダム・フセインは湾岸戦争の停戦条約に従って大量破壊兵器を廃棄しましたが、シリアの場合、イスラエルの直接的脅威があります。化学兵器を破壊した場合、イスラエルが侵攻した場合に報復ができません。それでも、イスラエルの陸軍は12万人程度で、シリアが侵攻しない限りは、全面的な侵攻を企てることは考えにくい上に、シリアの安定化を望むアメリカが侵攻を支持しないことから、化学兵器を廃棄しても、シリアの安全保障は脅かされません。イスラエルを攻撃できるというシリアの中東諸国への威信は失われますが、西欧諸国による空爆は避けられるという計算がシリア政府にはあります。

 しかし、ごく一部を保管し続けることで、アサド政権が最後の砦とすることも考えられます。そして、それは米政府の検証でも発見できないかも知れません。反政府筋からは、シリア政府が隠した化学兵器で反政府派を攻撃し、反政府派の犯行だと言い出す危険性が指摘されています。今後、何が起きるかは分からないのです。


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