化学兵器はこうやって廃棄する

2013.10.5


 BBCにシリアの化学兵器を処理する方法が掲載されています。簡単にまとめて紹介します。

 化学兵器の主要な処理方法は2つあります。

焼却   高温で化学剤を焼いて、その毒性を破壊
中和   水と苛性ソーダ等を加え、化学変化で中和

 爆発物で武装した化学兵器を破壊するには、危険が伴います。米軍は「爆発破壊システム (the Explosive Destruction System: EDS)」と呼ばれる機動ユニットを開発しました。EDSは2001年以降、米国内で1,700個以上を処理してきました。(資料はこちら 

 シリアで使われそうな、もう一つのシステムは、熱起爆テクノロジー(hot-detonation technology)です。これは弾薬を起爆チェンバーの中で、化学兵器と化学剤を破壊できる摂氏約550度に加熱します。スウェーデンのDynasafe社が開発し、中国、ドイツ、アメリカで使われています。米国防総省は、廃棄計画の詳細が分からない時点で、どの手法を使うかは決めていません。(資料はこちら

 砲弾に搭載されていない化学剤は、より取り扱いが簡単です。溶鉱炉の高熱は化学剤を商業処理施設で有害廃棄物として扱える、より害のない物に転換できます。

 化学剤を中和するには、化学剤をタンクの中に入れ、水と苛性ソーダを加え、毒性を下げ、有害廃棄物として処理できるか第2のタンクで焼却できるまでに扱いやすくします。


 時間がないので、以下は省略します。

 EDSの仕組みをもう少し詳しく説明します。

 弾薬に線状の爆薬を取り付け、弾薬を破片抑圧シールドで覆います。これをベセルに入れ、閉鎖し、ヘリウムガスを注入して、漏れがないかを確認します。爆薬を爆発させて、弾薬を破壊し、内部の化学剤をベセル内に漏洩させます。中和剤を注入して、ベセルを加熱し、必要なら完全に中和させるためにベセルを回転させます。

 朝日新聞が化学兵器禁止機構から聞いたところでは、シリアの化学兵器の貯蔵場所は25カ所で、8カ所が移動式です。当初、50カ所といわれていたのに比べれば、かなり少なかったようです。

 場所はダマスカス郊外、ホムス、ハマで、主要な戦場の近くです。長期間行う廃棄作業が戦闘により妨害される危険はあります。ロシア軍の作業所はシリア軍は尊重するでしょうが、アルカイダ系グループは恰好の標的とみるでしょう。無人偵察攻撃機を援護につけることはできますが、それで安心とも言えません。この部分で、問題が起きて処理が進まないようなら、この化学兵器廃棄は予定通りには進まないでしょう。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.