ノルウェーがシリアの化学兵器引き受けを拒否

2013.10.26


 military.comによれば、ノルウェーは、与えられた期限までに作業を完了する能力がないとして、破壊するためにシリアの化学兵器を引き取るという、アメリカの要請を拒否しました。

 ボアージ・ブレンデ外務大臣(foreign minister Boerge Brende)は、ノルウェーは化学兵器を受け取る港を特定できず、弾薬を破壊して生まれた廃棄物を処理する能力がないと言いました。ネット配信された記者会見で、ブレンデ外務大臣はアメリカとノルウェー両国は、この兵器廃棄の場所としてノルウェーを評価し続けることは無駄であることに合意したと言いました。ブレンデ大臣は、アメリカは他の選択肢を検討しているものの、詳細は与えられなかったと言いました。

 ノルウェーは今週早く、マスタードガスとして混合済みの化学剤50トンと、神経剤を作るために必要な材料300〜500トンの廃棄に参加するように依頼された国の一つだったと言いました。

 アメリカとロシアは2014年中期をシリアの化学兵器廃棄の期限として設定しました。ブレンデ大臣はそれはノルウェーにはあまりにも厳しいと言いました。


 国際紛争の解決に熱心なノルウェーとしては珍しい回答です。確かに、化学兵器を国際的に処理するのは、今回がはじめてです。どの国も自国の防衛を主任務と考えているから、こんなことのために準備はしていないというわけです。今後は、こうした任務が増えるかも知れませんから、各国が考えていく必要があります。

 自国防衛だけが軍隊の任務ではないという考え方は、今後益々重要になります。むしろ、自国防衛自体が戦争の原因となっている点を国際社会は考えるべきなのです。

 港に問題があるというのは、フィヨルド地形が関係しているのでしょうか?。あるいは、そこまで化学兵器を運ぶ安全な海路がないということでしょうか。

 それなら、日本がシリアの化学兵器を受け入れることは可能でしょうか。まず、運搬距離が長すぎるという問題があります。次に、自衛隊は野戦で除染を行う装備しかないという問題があります。残念ながら、日本が化学兵器を受け入れる可能性はないということになります。自衛隊の化学防護隊は、外国軍のNBC攻撃への対処、オウム真理教のようなテロ攻撃への対処、原発事故などへの対処がその歴史で、大量の化学兵器の廃棄については想定外でした。

 アメリカがノルウェーに依頼したのは、化学兵器全量の約半分です。残り半分をシリア国内で廃棄するのか、別の国に依頼するのかは興味の的です。米軍をシリア国内に入れれば、国連軍の形をとっても、イスラム過激派には格好の攻撃目標です。廃棄計画全体も早く知りたいところです。


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