強襲上陸部隊の名称が変更になる見込み

2013.10.12


 朝日新聞によれば、防衛省は12月に策定する新防衛大綱に、陸上自衛隊に海からの上陸作戦能力を持たせる「水陸両用団」(仮称)の新設を明記する方針を固めました。

 米海兵隊をモデルに、離島などの防衛が専門の陸上自衛隊西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市、700人)を中核に2015年度にも発足させ、将来的には3千人規模に増員します。

 水陸両用団の新設は、中国の海洋進出を念頭に尖閣諸島など南西諸島防衛を強化する狙いがあります。水陸両用車を使って、敵に占領された島を奪い返す上陸作戦の能力を持ちます。尖閣諸島周辺には、たびたび中国の艦船が現れており、中国との偶発的な衝突の可能性も指摘されています。こうした状況を踏まえ、防衛省は機動力の高い水陸両用団の新設は緊急の課題と判断しました。


 以前に指摘したように、この部隊に「海兵隊」という名称は不適切です(過去の記事はこちら )。防衛省はそれに気がつき、「水陸両用団」という仮称を出してきました。これは当然そうあるべき名称です。多分、このままか、これに少し手を加えた名称に落ち着くでしょう。

 この部隊は尖閣諸島の防衛には使えません。尖閣諸島は狭すぎて、強襲上陸部隊が行動できないのです。その点で、この記事は間違えています。尖閣諸島に上陸した外国軍は海上封鎖で兵糧責めにするか、砲爆撃で殲滅します。水陸両用団に出番があるなら、敵の全滅後に上陸し、戦果を確認し、島に日の丸を立て、政府の公式発表のための証拠映像を撮ることくらいです。これは水陸両用団でない部隊、たとえば空挺団でもできます。むしろヘリコプターがあった方が、敵兵の死体と装備品の回収作業が楽でしょう。

 実のところ、中国海軍には自衛隊を相手にして尖閣諸島を奪えるほどの実力はありません。現在は十分な勢力バランスがとれているわけです。そこへ水陸両用団を創設することは、「屋上屋を架す」のと同じです。海上自衛隊が抑止力になっているのに、水陸両用団を作る意味はそれほどはありません。しかし、バックアップ力があるのはよいことです。海上自衛隊が機能しない場合、ほかの手段でも自国領域を主張できるからです。水陸両用団は抑止力ではなく、バックアップ力として機能することになります。

 水陸両用団は石垣島程度の広さがある島の防衛には直接的な効果を生みます。しかし、日本人でいま、石垣島を中国軍が狙っていると考える人はないでしょう。

 朝日新聞の記事は、水陸両用団が尖閣諸島の防衛に役立つかのように書いていますが、完全な誤りです。左寄りと称される朝日新聞からして、このように読者を誤り導いています。


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