シリア国内で百万人が難民に

2013.1.9


 BBCによれば、22ヶ月続く内戦のために、百万人のシリア人が飢餓に直面し、援助を求めていると、国連は言います。

 世界食糧計画(WFP)は、150万人のシリア人が援助を求めていますが、戦闘が続き、タルトゥース港(Tartus)が食糧を出荷できないため、多くの人が支援を受けられていません。国連は2011年3月にはじまる内戦で、60,000人以上が殺されたと見積もります。

 反政府派は、ここ数ヶ月で北部の支配権を得ました。増大する危機のため、WFPはホムス(Homs)、アレッポ(Aleppo)、タルトゥースとカミスリー(Qamisly)からスタッフを撤退させたと言います。2012年末には、WFPの支援トラックへが攻撃される回数が増え、燃料不足にもみまわれました。

 国連難民局は、シリア国内での難民が過去数ヶ月で100,000人近くに増加したと言いました。1月6日現在、登録された難民と登録を待つ個人は597,240人で、先月の509,559人から増加しました。国連は約400万人のシリア人が人道支援を必要としていると言います。

 月曜日に、ニューヨークタイムズ紙は、イスラエル情報部が、シリア軍が神経ガスのサリンと疑われる化学剤を、貯蔵施設2ヶ所で混合し、航空機に搭載できる500ポンド爆弾多数に詰めていることを示したと報じました。


 シリアの民間人の現状は記事をチェックしていますが、当サイトでは紹介してきませんでした。ここでは軍事面を中心に考えてみたいと思うからです。しかし、戦争と平和を考える上で、戦争難民の問題は議論が不可欠です。当サイトが軍事問題を取り上げる最終的な目標は、こうした悲劇を防ぐことにあるからです。

 難民の多くはレバノンにいます。そして、その数はすでに極限近くまで膨れあがっています。これがシリア内戦を一国も早く終わらせる必要があるという理由です。アサド大統領に退陣する気がない以上、シリア軍に打撃を与え、敗北を認めさせるしか方法はありません。多分、ここ数ヶ月で決着は着くと思われますが、それまで民間人をできる限り保護しなければならないというのが、現在の国際政治の常識です。

 軍事問題には、難民問題も含めるべきではないかと、私は考えています。戦略や戦術、科学技術の問題だけでなく、難民をどう助け、どう救助するかという問題も、軍事の一部門として考えるべき時期に来ていると言えます。

 サリン剤を製造して、爆弾に搭載したという情報は非常に気になります。出先で、詳しく調べている時間はありませんが、できるだけ早く、確認したいと思っています。

 この化学兵器の使われ方が問題です。多分、ダマスカスやアレッポの周辺で使われるはずです。この場合、アサド支援者も被害を受ける可能性がある点に注意してください。反政府派拠点の周辺にいる、アサド支援者が、拡散した化学剤で被害を受けるかもしれないのです。こうした無差別的兵器は攻撃する相手を選ばないのです。しかも、ほとんど勝敗がついて、いまさらという時に使われるものだという点で、悲劇的です。

 先日、ホムスで化学兵器が使われたという話は、その後、特別な展開を見せていません。結局、化学兵器ではなかったということなのでしょう。 だったら、何だったのかという疑問は残ります。これも追跡してみたいと思っています。



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