誘拐犯の動機はやはり政治目的か?

2013.1.21


 アルジェリアの人質事件について、さらに情報が出てきました。それによって、当初の解釈を修正する必要も出てきました。

 alarabiya.netによれば、アルジェリアの人質事件を起こした過激派は、フランスにマリで行っている空爆を中止するように要請したと、モーリタニアのニュースサイト「Sahara Media」は言いました。

 「我々アルカイダは、これが神聖な作戦だと発表する」「マリのイスラム教徒への爆撃を止めるなら、我々は西欧とアルジェリアの政府と交渉する用意がある」とモクタール・ベルモクタール(Mokhtar Belmokhtar)はビデオの中で言いました。「Sahara Media」は、そのビデオ自体を示さず、情報は未確認です。

 アルジェリア軍は日曜日にガス施設を捜索し、25人の人質の死体を発見しました。目撃者は日本人人質9人が処刑されたと言いました。水曜日以降に少なくとも23人の人質が殺された後、モハメッド・サイド通信大臣(Communications Minister Mohamed Said)はラジオ局に「総計が上へ修正されることを恐れています」と言いました。23人が日曜日の25人に含まれるかどうかは明らかではありません。

 特殊部隊がガス施設を襲撃した翌日、「全部で9人の日本人が殺されました」と、ブラヒム(Brahim)というアルジェリア人の目撃者は言いました。最初の3人は、武装勢力の攻撃が行われたとき、空港へ彼らを運ぶバスから逃げようとしたので殺されたと、目撃者は言いました。「我々は水曜日の5時30分に銃声を聞いた時、彼らがバスから逃げようとした我々の日本人の同僚を殺したと分かった後、恐ろしく感じました」と、リアド(Riad)といい日揮社員は言いました。ガンマンたちは他の者たちを、彼らが数百人の人質をとった居住区へ連れて行きました。「テロリストは『ドアを開けろ!』と強い北米のアクセントで叫び、発砲を始めました。それから日本人2人が死に、私たちは(施設の中で)別の日本人4人の死体を見つけました」と彼は付け加えて、感情が高ぶって息を詰まらせました。東京では外務省は「我々はこの種の情報にはまったくコメントしない立場です。ご理解ください」と言いました。

 alarabiya.netによれば、人質をとったアルカイダとつながりがある武装勢力は、解放された人質の一人が、彼らはアルジェリア人ではなく、十字軍戦士を探していると言ったと言いました。

 アルジェリア人は外国人よりも扱いがよく、電話を使うことを許され、すぐに釈放すると約束されました。「私たち(アルジェリア人)はしたいとおもったことをして、彼らは私たちに携帯電話を切るように言いませんでしたし、尋問もしませんでした。彼らは私たちに座るように言い、彼らはアルジェリア人ではなく十字軍戦士と呼ぶ者たちを追いかけていると言いました」。「私たちは縛られた外国人を見ました。私たちが彼らにここを去りたいと質問すると、彼らは一緒に座るように言い、1時間半で解放すると言いました」。

 アル・タヘル・ビン・シャナブ(Al-Taher bin Shanab)が犯人グループを指揮していました。人質によれば、メンバーは彼をアルカイダのメンバーが上官に向けて一般的に使う肩書き、「エミル・タハ(Emir Taha・タハ王子の意味)」と呼びました。「このエミル・タハは私たちに、我々はここに死んで殉教者になるために来た。彼らは国を支配している当局者や将軍と話がしたいと思っていました」。武装勢力は国籍が違う13人の外国人を捕まえて喜んでいました。彼らは全員、人質を監視する自爆犯とつながれていました。

 ガス施設を攻撃したグループの現場指揮官はニジェール人のベテラン戦士で、アブドル・ラーマン・アル・ニジェリ(Abdul Rahman al-Nigeri)だと、モーリタニアの通信社は言いました。ニジェリは誘拐事件全体の指揮官、ベルモクタールの側近です。ベルモクタールは政府軍が攻撃する間には姿を見せなかったようです。ニジェリはイン・アメナス(In Amenas)に近い施設の中で隠れており、人質7人を連れているといいます。

 別の指揮官、アブ・アル・バラー・アル・ジャザーリ(Abu al-Bara'a al-Jaza'iri)は居住施設の中で殺されました。

 事件をよく知る関係者によれば、アルジェリア軍は土曜日に、ガス施設で15体の焼かれた死体を見つけました。死体の身元を特定売る調査が進行中です。これらはアルジェリア軍が人質を解放する作戦を開始したあとで見つかりました。発見時の状況については情報がありません。

 BBCによれば、アルジェリア軍の襲撃は、武装勢力が人質を殺し始めた後で始まりました。


 記事は一部を紹介しました。人質の安否についても詳しく書かれていますが、最小限にして、時間を把握するために必要な情報に絞りました。

 どうやら、犯人たちは最初から籠城するつもりだったようです。人質をとって籠城し、時間を稼いで、アルジェリアとフランスを交渉の場に引っ張り出し、マリへの空爆を止めさせるという政治的目的を持っていたということになります。死ぬ覚悟もできていたようです。

 しかし、それなら犯人たちが人質を連れて逃げることに固執したというアルジェリア政府の主張と食い違います。これらをどう解釈するかが問題ですね。アルジェリア政府が武装勢力に責任を負わせるために嘘をついているのか、武装勢力が嘘をついているのか、です。

 籠城が目的なら、バスではなく、居住施設を襲うべきでした。適当な数の人質を得たら、他は放置して、すぐにプラントに向かい、施設に爆弾を仕掛け、交渉に応じないと人質を殺して、施設を爆破すると宣言する作戦しかありません。決意表明と見せしめのために人質を数人殺すのも効果的です。あとは度胸比べ、体力比べです。バスを狙ったのは、人質をとって、逃走するつもりだったことを連想させます。

 これまでに手に入った情報だけから判断しているので、この推測は完全ではありません。

 イスラム武装勢力が日本人を「十字軍戦士」とみなしていることが初めて確認されたことは衝撃的です。十字軍戦士はヨーロッパ人であり、日本人はまったく無関係です。しかし、彼らから見れば、日本人は西欧と一緒の金持ち倶楽部の一員に過ぎず、神聖なイスラムの土地から富を奪っていく悪者というわけです。ここまで日本人の評判が落ちた原因は、多分、小泉政権時にイラクに自衛隊を派遣したことにあるのでしょう。


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