リビアの大衆デモで民兵が解散へ

2012.9.25


 military.comによれば、リビア軍は日曜日に首都、トリポリで政府の統制を外れて活動する民兵の前哨数カ所を襲撃しました。一方、米領事館を攻撃したと疑われている民兵は大統領の命令で解散したと言いました。

 ムハンマド・エル・マガリエフ大統領(President Mohammed el-Megaref)は土曜日、民兵は政府の傘下に入るか、解散しなければならないと言いました。この動きは米大使を殺害した攻撃の後、強力な武装グループに対する大衆の怒りを利用することを狙っているようです。

 金曜日、市内の武装グループの施設に対する襲撃の前、ベンガジの住民は民兵が解散することを求めた大規模なデモ行進を行いました。政府は素早く行動するために大衆の感情を利用しました。公式メディアのLANAニュース社が発表した声明では、リビア軍はトリポリ(Tripoli)とその他の街の基地、前哨、兵舎を利用しているすべての武装グループに明け渡しを求め、拒否すれば武力を行使すると警告しました。

 日曜日にリビア軍は、空港への幹線道路上の前哨を含めた、首都内のいくつかも拠点を襲撃しました。その前哨はカダフィ大佐が首都から追放されてから、様々な民兵が使っていました。

 それでも、政府はいくつもの障害に直面します。残りの民兵を解散させるためには最も強力な民兵の協力が必要です。主要な施設を守るには民兵に依存し、国境、空港、病院、去る7月の選挙を守るために彼らを使いました。いくつかの民兵は過去数週間に合併し、月給がもらえる政府軍と契約する手順を踏みました。西部のミスラタ(Misrata)では、住民は最近、何十人もの民兵が会議を開き、政府の下で働くことを決めたと言いました。彼らは司法省が運営する市中にある主要な刑務所3カ所を引き渡しました。

 しかし、政府が最も強力な民兵に傘下に入らせるための意思を持ち、火力を行使するかは不透明です。旧政権の支持者は国のいくつかの場所、特に、バニ・ワリド(Bani Walid)と南部の一部を支配しつつけています。バレク・アル・シャティ(Barek al-Shati)近くのカダフィの支持者は、政府支持の民兵と数日間衝突し、約20人が殺され、今週、バスから30人の政府派民兵を誘拐しました。

 東部のアンサル・アル・シャリア(Ansar al-Shariah)のような強力な民兵は、参謀長がどの民兵が合法でどれが非合法かを決める明確なシステムはないと言います。リビア政府は米領事館への攻撃を行ったと疑われる過激派グループを合法とは認めませんでした。東部で最も統制がとれ、恐れられるアンサルの民兵は日曜日、軍に加わらずに解散しました。「現在、我々は個人用の小火器しかありません」とグループの幹部、ユーセフ・ジハニ(Youssef Jihani)は言いました。グループは重火器をベンガジで政府に従う主要な民兵「リビアの楯(Libya Shield)」へ引き渡しました。リビアの楯の幹部には、現時点でこの件の確認はとれていません。

 解散への動きは、金曜日に30,000人がベンガジをデモ行進した後に来ます。抗議者たちはかつてカダフィ軍の主要基地だった施設からアンサルの兵士たちを追い出し、車に火をつけました。ほかの者はジャララ病院(the Jalaa Hospital)を襲い、そこにいるアンサルの兵士を追い出しました。


 記事は一部を紹介しました。

 リビア安定化の動きが、図らずも民衆のデモで起きた形です。部族単位で動くリビアとしては、とても珍しい形かも知れません。カダフィ大佐の追放では、各部族の協力が得られましたが、同じエネルギーが民兵の追放につながるとは予想していませんでした。これはリビア全体で一つの国家という意識が高まった証拠なのかも知れません。今の段階では半信半疑ですが、よい方向への発展を願わずにはいられません。リビアはインフラがしっかりした国です。良くも悪くも、カダフィ大佐が力を入れたため、各地に立派な施設があります。これは民主化移行への下支えになります。

 民兵がいなくなり、軍事が完全に政府の管轄下となれば、政府組織は一気に効率化、近代化が図れます。外国の軍隊との交流も進み、地域単位での相互支援も可能になるでしょう。

 リビアが本当に民主国家になれば、これは北アフリカの歴史に大きな転機となります。エジプトにも同じ動きがあれば、なおさらこの力は高まります。この動きは長い時間をかけてアフリカ全体に広まるかも知れません。北はリビアとエジプト、南は南アフリカから民主化の動きが進み、最終的に中央アフリカまで浸透するのです。それは「アフリカの夜明け」となるべき動きでしょう。 ワクワクするような変化です。

 しかし、当面はリビアの動きを見守りたいと思います。また、こういう動きを支援する発想が日本外務省に欲しいものだと思います。


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