シリアの人権侵害を国際刑事裁判所へ

2012.9.19


 BBCによれば、シリアでの人権侵害を調査している国連委員会は戦争犯罪を犯した疑いのあるシリア人と部隊の秘密リストを作成したと言いました。

 調査主任のパウロ・セルジオ・ピニェイロ(Paulo Sergio Pinheiro)は、委員会が驚くほど膨大な証拠の山を集めたと言いました。彼は国連安保理に国際刑事裁判所(ICC)にシリアの状況を付託するよう主張しました。

 一方で、人権団体「Human Rights Watch」は反政府派が拘束した者を拷問し、処刑していると言いましたが、政府軍による暴力は一層広範だと付け加えました。

 シリアに関する独立査問委員会は国連人権理事会によって昨年設置されました。

 反政府軍も戦争犯罪を犯していたことを委員会は見いだしましたが、政府軍と重要性、頻度、規模は政府軍と同じではありません。政府軍と政府派の民兵が5月のホウラ(Houla)で108人を虐殺したとも結論しました。月曜日に、委員会はジュネーブで行われた人権員会で、不法行為を犯した個人と部隊に関する第2の秘密リストを作成したと言いました。容疑者の氏名を公表しないことについて、委員会は法廷と比較して委員会が採用した証拠の基準が低いことをあげました。もう一つのリストは2月に国連人権高等弁務官ナヴィ・ピレー(Navi Pillay)に提出されました。


 記事は一部を紹介しました。

 ようやく国連がシリア情勢を国際刑事裁判所へ持ち込む動きが出てきました。このように、かつては対処のしようがなかった、国家の内部で行われる人権侵害に対して、国際的な力で裁くことができるのです。これが現代の基準なのです。だからこそ、ジャーナリストの山本美香氏をシリア軍が意図的に殺害したなら、日本政府が追求する必要があるのです。

 ところが、日本政府にはそういう文化的土壌がなく、どこかの国で大領虐殺が行われたとしても、公式声明は常に型どおりで、遺憾だとはいうものの、本気で問題視しようとしないのです。

 アメリカが2003年にイラクに侵攻した際、フランスとドイツが反対し、アメリカと外交上の危機になりました。後に、この二カ国はアフガニスタン戦には協力することになりましたが、これはイラク戦に関する対立の穴埋めでした。しかし、アフガン戦も正しい戦略とはいえず、いま退却を迫られているところです。イラク戦の際に、国際法的に正しかったのはフランスとドイツです。しかし、彼らも完全にアメリカを無視することはできず、戦略的に間違っているのに、アフガン戦には協力しました。このように、戦争においては、国際法的な正当性と、戦略・戦術的な正当性の両方が不可欠であり、どちらが欠けても敗北を招くということを、我々は肝に銘じなければなりません。言い換えると、我々は悪魔のように狡猾に勝敗を考察し、国際法的(倫理的にも)には天使のように気高くあるべきなのです。

 私が最も不安なのは、こういう能力を持つ政党が日本に見いだせないことです。


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