オランド大統領がシリア暫定政権を承認と約束

2012.8.29


 military.comによれば、フランスのフランソア・オランド大統領(President Francois Hollande)は月曜日にシリアの反体制派に暫定政府を作るよう要請し、それがアサド大統領の出国を加速することを期待して、暫定政府を承認すると約束しました。

 シリアの反政府派は分裂したままで、暫定政府がいつ作られるかは不明ですが、オランド大統領の声明はそれに刺激を与えるために出されました。多くの西欧・アラブ諸国はアサド大統領に退任するよう求めましたが、正式に反政府派を認めるところまで行っていませんでした。「フランスはシリアの反政府派に包括的、代表的な暫定政府を作るように求めます。それは新しいシリアの合法的な代表となることができます」と、大統領はフランス大使たちの前で言いました。「我々はこのステップを加速するためにアラブのパートナーたちを盛り込んでいます」「結成されたらフランスはシリアの暫定政府を承認するつもりです」。

 匿名の米政府当局者は、フランスがどことも調整せずにシリアの暫定政府を要請し、アメリカはすぐにこの声明に呼応しないと言いました。当局者はシリアの分裂した反政府派が移行計画に合意すらしていない時に暫定政府について話すのは早計だと言いました。

 オランド大統領はシリア政策についてフランスの保守派から批判を受けました。特に前任のニコラス・サルコジ(Nicolas Sarkozy)は、フランスはリビアでやったようなNATO軍主導の軍事行動をやるべきだと言いました。シリア内乱の最初の14ヶ月の間にサルコジ氏は国際社会の委任なしでの軍事行動を行いませんでした。

 反政府派の主要なグループであるシリア国民評議会(the Syrian National Council)の指導者、アブデルバセット・シイーダ(Abdelbaset Sieda)は最近、移行政府について計画し、顧問を務めていると言いました。しかし、他のいくつかの反政府派グループは、古参の反政府派ヘイザム・マレヒ(Haitham Maleh)が指導する新しい反政府派同盟を含める、似た計画を持っていることが知られています。

 military.comによれば、アブデルバセット・シイーダはオランド大統領の声明に対するアメリカの対応に反発しました。シイーダはシリア国民評議会は真剣に準備と他のグループとの相談をしており、反政府派はアサドが倒れたあとの真空を埋める政府を形成すると言いました。「シリアの反政府派の間に違いがあることは間違いなく、これはどの国でも同じです。しかし、我々が共通のビジョンで合意さえすれば、こうした違いは克服できるのです」。彼はアメリカのコメントは国際社会がシリアにその時が来た時に明確な行動をとる準備できていないことを示し、反政府派にすべての批判を向けようとしていると言いました。「国際社会は手遅れになる前に行動を起こさなければなりません」。


 記事は一部だけを紹介しました。

 オランド大統領の発言は国内での批判にこたえるためのものではありますが、全体的な流れはこの通りです。ヨーロッパやアメリカは新シリア政府を承認し、アサド大統領を追放しようとします。サルコジは現職でない気楽さで発言しているだけです。リビア作戦で大金を投じたこともあり、現職時には動けていません。それでも民主国家では世論に配慮しなければいけないので、こうした動きが出てくるのです。アメリカの関心はアフガンからの撤退最中にあり、シリア介入には慎重です。空爆による支援が実現することはまだ先か、実現しないかも知れません。しかし、このドミノ現象をさらに他のアラブの国や地域で起こすためには、シリアの革命は成功させなければなりません。

 化学兵器が使用されたら軍事介入するというオランド大統領の発言は、シリア軍に化学兵器を使わせないという牽制と、その時が来た場合に一気に軍事介入するためのものです。化学兵器を使ったとなると、誰も介入に反対しなくなり、批判を避けながら、軍事介入に踏み切れるのです。

 シリアの反政府派は、多くのリビア軍が反政府派に転じたリビアの場合と違い、内乱を長引かせることでシリア政府が根を上げるのを狙っています。重火器がない反政府派は決定的な決戦をシリア軍に挑めません。なので、この戦いはシリア政府が根を上げるまで続き、長期化すると思われるのです。リビアの反政府派拠点のベンガジと首都トリポリの間は直線距離で約650km、シリアのアレッポと首都ダマスカスの間は約310m。NATO軍が空爆で支援してもカダフィが逃亡を図るまでに約6ヶ月かかりました。経済封鎖は効果が出るまでに時間がかかること。重火器、空爆による支援がないことを常に忘れないでください。それから民間軍事会社が大きく介入する可能性が高いので、その徴候を捉えたいと思っています。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.