ダマスカスとアレッポでゲリラ戦が継続

2012.8.25


 BBCによれば、戦いはアレッポとダマスカスで続いています。

 反政府派は戦車に支援された政府軍が金曜日午後に南西部の郊外、ダレイヤ地区(Darayya・kmzファイルはこちら)に入り、中心部にあるアル・サウラ通り(al-Thawra Street)で見られたといいました。「反政府派はほとんどが脱出しました。いま恐れているのは、ムアドハミヤ(Muadhamiya)のように、政府軍が若い男たちを一斉検挙して、即座に処刑することです」と反政府派アブ・キナン(Abu Kinan)は言いました。ムアドハミヤでは約40人の男が至近距離から撃たれた男が政府軍が引き揚げた後で建物の中から見つかったと報告されました。初期に、政府軍はダレイヤを攻撃するために、近くのタラット・カウカバ軍事基地(Talat Qawqaba military base)の多連装ロケットランチャーとメッツェ軍用飛行場(Mezzeh military airport・kmzファイルはこちら)の大砲を用いました。数日間砲撃を行い、その後で地上部隊が掃討して、反政府派を一掃しようとしました。しかし、反政府派は古典的なゲリラ戦術を用いており、打ち破ることを難しくしています。反政府派は72時間以内に少なくとも70人がダレイヤで死んだと言いました。彼らの大半は民間人でした。


 この記事はシリア内戦の戦況をよく表現しているように思えます。

 下の地図はWikimapiaのダマスカスの地図です。

画像は右クリックで拡大できます。

 黄色のエリアがダレイヤで、その北西に見える滑走路はメッツェ飛行場です。タラット・カウカバ基地の位置は特定できませんが、オレンジ色の部分は陸軍施設を示している点に注意してください。この中にその基地はあるはずですが、ダマスカス南部と西部はこのように大規模な軍事基地地帯となっているのです。これらの基地に軍は孤立していて、ここから出ては反政府派がいる場所を攻撃しているわけです。BBCが報告している戦闘地域の地図と合わせて考えると、戦いの概要が見えてきます。

 シリア軍は依然として強力な戦力を持っていますが、国土全体すべてを占領するまでの力はありません。革命がはじまると、各基地に孤立してしまい、定期的に各地域で掃討作戦を行うしかなく、完全に反政府派を打倒することはできないのです。シリア軍はいつ終わるとも知れない掃討作戦を繰り返しているだけです。

 反政府派はシリア軍を打倒しなくても、内乱を長期化することでアサド政権に亀裂を入れ、内外からの圧力により、退陣に追い込むくらいの力は持っています。内乱が続けば為替レートも値下がりし、いずれシリア政府は経済難に陥ることが分かっているからです。

 この方法では政権崩壊には時間がかかります。年内は難しいでしょう。少しでも早く結末を見るためには、難民を支援し、シリア政府に圧力をかけ、反政府派に効果的な武器を供給することです。特に、弾薬庫や補給品の貯蔵庫を破壊することは効果があります。もし1回でもシリア軍が化学兵器を使ったら、NATO軍はそれを口実にこうした施設に対する空爆をはじめるでしょう。補給品がなくなると軍は降参するしかありません。いまのところは、トルコからシリア北部に対して支援を行い、アレッポの支配を確実にしようとしているところです。年内にそれを実現することが目下の目標です。



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