イラン軍がシリア軍を背後で支援

2012.8.16


 military.comによれば、レオン・パネッタ国防長官(Defense Secretary Leon Panetta)がイラン軍がシリア軍への支援を拡大していると言いました。

 「イランがシリアでより大きな役割を果たしていることは明らかです」「彼らはシリアの民兵を訓練しようとしています。我々はイランがその役割を果たすべきとは思いません」と、パネッタ長官は統合参謀本部議長マーティン・デンプシー大将(Chairman of the Joint Chiefs of Staff Gen. Martin Dempsey)と共に参加した国防総省の記者会見で言いました。

 イランが3月に国連計画を支持した時、イランは内紛の終結を支持したように見えました。しかし、7月にイランのモハマド・レザ・ラヒミ副大統領(Vice President Mohammad Reza Rahimi)はアサド政権に対する忠誠を約束しました。「シリアに損害を与えるために勢力が結集したことを考えると、常にシリアの兄弟の側に立つというイランのシリアに対する立場は変えることができません」とラヒミは言いました。

 イランはシリア軍が戦いに疲れた徴候を示し始めた今、それを行っているように見えると国防総省当局者は言いました。「シリア軍は18ヶ月間戦っています。どの軍隊もそのペースによって負担がかかるものです」「彼らは再補給の問題と士気の問題を抱えています。私はそれがシリア軍からプレッシャーをとるために民兵を編成することでイランが介入した理由だと思います」とデンプシー大将は言いました。彼は、イランがイラクでやったように、シリアでシーア派イスラム教徒を徴用して訓練しようとしていると言いました。

 国防総省は米軍の介入を勧告していませんが、シリアに強力な外交努力を行うことの重要性を強調しました。パネッタ長官は、アメリカは現在、人道支援、シリアの化学生物兵器基地の監視と反政府軍の支援に集中していると言いました。しかし、彼は軍事的解決が必要になれば、十分な米軍の戦力がこの地域にあると言いました。「偶発的な出来事に対処し、大統領が我々に求めるあらゆることに応える準備をするために、中東に十分な軍隊を配置しているということを、私は疑いません」。国際社会と米国議会は飛行禁止区域の設定を議論していますが、パネッタ長官はそれは最優先事項ではないと言いました。「我々の望みは、イランが彼らがどれだけ関与するかをより考えることですが、いずれにせよ、我々はイランがシリアでの影響力を及ぼさないことを確実にしなければなりません」。


 国内報道なら「シリアの内戦激化」と書くでしょうが、役者が揃ってきたというのが本当のところです。作用があれば反作用があるもので、このくらいの規模の紛争は簡単には収まりません。こうした紛争の構造を理解しない人が戦争を語る時、その結論は不合理なものになります。

 幸い、シリアとイランは陸続きではないので、イランの革命防衛隊が簡単にシリアに入ることはできません。武器の移送も同じでしょう。レバノンを利用する手は使えそうにありません。かつてはシリア軍が駐留したこともありますが、現在は西欧から様々な支援を受けているからです。そうなると、細々と秘密裏に軍事顧問を送り込む手しかありません。今回のパネッタ長官の発言は、イランに対する牽制みたいなものです。

 人道支援に集中しているという話は本当でしょうが、それだけではないはずです。第一段階として、アメリカの偵察、諜報資源が収集したシリア軍の配置などのデータが反政府派に提供されています。反政府派がやるべきなのは、シリア軍の重火器の破壊です。戦車、装甲車、重砲、航空機をどうやって破壊するかが課題なのです。ピックアップトラックに迫撃砲を乗せたり、地対空ミサイル、対戦車ミサイルなどを操作する人員を乗せる必要があるでしょう。シリア軍が隠れている場所を突き止めたら、接近して攻撃し、逃げるという手法の繰り返ししかありません。そういうことができる人物を養成する必要があります。その訓練がトルコ国内で行われているはずです。教官はトルコ軍や民間軍事会社でしょう。この準備に数ヶ月間はかかります。反政府派の本格的な攻勢はその後になるのではないでしょうか。



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