防衛大臣に森本敏拓殖大大学院教授が就任

2012.6.4


 先ほど、森本敏拓殖大大学院教授が新しい防衛大臣に選ばれたとの報に接して驚かされました。

 私は4月23日に民主党に送った提言で次のように書きました。(全文はこちら

 平和国家としての日本を実現しつつ、国土保全を執行するだけの見識を持ち、民主主義体制の下での自衛隊を整備する能力のある政治家を育てること。それができないのなら、外部にこれらに相応しい人物を求めて防衛大臣に任命する態勢を党内に整える必要があります。そして、これこそが政権党が防衛分野に関して実現すべき政治改革です。

 森本氏が私が考えるような理想的な防衛大臣かというと、多分外れているのだと思います。彼は学者ではあっても、政府寄りの立場をとってきた人で、客観的な研究家というよりは政府の代弁者として活躍してきた印象です。森本氏の言動を熟知しているわけではありませんが、テレビ番組などで聞く意見は常に外務省寄りで、よい印象はありません。防衛大学から航空自衛隊、外務省へと進んだ経歴からして、民間人とは言え、政府の代弁者としての役割を務めてきました。

 私は読んでいないのですが、「有事法制――私たちの安全はだれが守るのか」「早わかり国民保護法」という著書は、少なくとも国民保護法を批判する本ではないようです。アメリカのイラク侵攻(2003年)についてはやり方を批判してはいるものの侵攻そのものには反対せず、自衛隊のイラク派遣にも反対しないと中途半端な立場をとりました。私は侵攻作戦は治安作戦となった段階で維持できなくなることを侵攻前に予測していました。だから、最初からイラク侵攻には反対で、負け戦に加担するだけという理由で自衛隊のイラク派遣にも反対でした。私は理想とするのは、こうした戦争の賭博性をよく理解し、事前に無用な争いを避けるような人物です。

 素人の大臣に懲りた民主党が手っ取り早く民間人を起用するために選んだということでしかありません。民主党にとっては選びやすい人だったろうと思うのみです。

 なにより、こうした氏の経歴からして、沖縄県は森本氏を警戒し、民主党に一層の不信感を持つのではないかと思われます。森本氏には「普天間の謎―基地返還問題迷走15年の総て」という著書があるのですが、この中でどのような意見を述べているのかが気になります。これから取り寄せて読んでみようかと思います。私の氏の評価は沖縄問題をどう処理するかで決まるかも知れません。



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