米幕僚学校の反イスラム教育が問題に

2012.5.12


 military.comによれば、イスラム系の市民組織が扇動的な反イスラム的教材を用いるノーフォークの統合軍幕僚学校の講師を解職するよう要求しました。

 ワシントンを拠点とする「米・イスラム関係評議会(Council on American-Islamic Relations)」は「Wired magazine」が講座についての詳細を報じたあとで行動しました(該当記事はこちら )。それは先月、生徒から不満が出た後で国防総省により中断されていました。

 ウェブサイト上で、Wired誌は授業に詳しい者から受け取った講座の資料を報じました。これらの資料はイスラム教徒との「近接的総力戦(near total war)」の可能性をあげ、それはジュネーブ条約の放棄、広島と長崎の原爆で行われたような民間人を狙うことを含みます。それはサウジアラビアでメッカやメディナのような聖都を破壊することを含められると資料は示唆します。

 「我々の将来の軍指揮官に、敵のテロリストではなく、イスラム信仰そのものとの戦争をすることを教えた者たちに説明晰にがあるのは当然です」と、イスラム団体の理事ナイハド・アワド(Nihad Awad)はレオン・パネッタ国防長官(Defense Secretary Leon Panetta)への書簡で書きました。「こういう衝撃的な事実は、我が国の最も敬意を受ける機関が積年の価値観とするものに完全に一致していません」。アワドは講義を受けた将校全員を再訓練することも要求し、国防総省当局者と国内のイスラム指導者との会談を提案しました。「これが修正されないままだと、かつてこういう将校たちが受けた、偏見に満ちて不正確なアメリカらしくない訓練は、今後ずっと我が国の安全、イメージ、利益を害するでしょう」と彼は書きました。

 国防総省は先月、8週間サイクルの最初の授業の後で講義を停止し、文化的感受性と信仰と知識のバランスへの尊重を確保するために、軍のすべての部署にわたり、教材の徹底した調査を命じました。

 新しいWired誌の記事は、はじめて講義を教えた将校の名前「マシュー・A・ドーリー陸軍中佐(Army Lt. Col. Matthew A. Dooley)」を報じました。国防総省広報官は、ドーリーは大学で働いているものの、教えてはいないと統合参謀本部会議長マーティン・デンプシー大将(Gen. Martin Dempsey)は言いました。デンプシー大将は、ノーフォークの講義の教材はアメリカの信教の自由と文化的意識への理解に反すると言いました。「それは我々の価値観に対してまったく好ましくなく、学問的に健全ではありませんでした」と彼は記者会見で言いました。

 Wired誌の記事に書かれた資料の中には、ドーリーの名前と2011年7月の日付がついた「我々は何ができる? 対ジハード作戦のデザインモデル」と題した28ページの書類があります。書類は米政府の政策を意味しないものを含みます。「このモデルはイスラム教徒がすでに西欧、特にアメリカに対して宣戦布告をしたと断定します」「よって、それを常に共通の土台の選択肢があると仮定する現在の我々の世界戦略に沿って続けることは不合理です」。書類は、武力紛争の基準を規定する1949年のジュネーブ条約は、現在のイスラム・テロリストの一般的な慣習のために、世界的に関連性がないか、尊重されていません。これは再び、必要なら一般大衆に対する戦争を行うという選択肢があるままにします(ドレスデン、東京、広島、長崎の歴史的先例をメッカやメディナの破壊に適用すること)」と言います。

 2004年以降提供されたこの選択科目は年間約100人の将校、一般的には海軍中佐と大佐、陸軍と空軍、海兵隊の中佐と大佐を招き、高レベルの合同任務の準備をさせました。


 またもや頭のおかしい米軍人が事件を起こしました。日本の外務省が言うように、アメリカが日本と価値観を共有するという考え方は慎重に評価されるべきです。ドーリー中佐みたいな人が軍の中に混じっていることを考えると、アメリカとの関わりは日本を混乱に陥れかねません。

 ドーリー中佐が言うジュネーブ条約の破棄は、主に民家人への直接的攻撃を認めることを指しています。引き合いに出された都市名はすべてが米軍による都市爆撃、つまり民間人を対象とした無差別爆撃を含み、特に広島と長崎は原爆攻撃を意味しています。こういう攻撃をメッカやメディナへ行えということです。

 都市爆撃は大火災を引き起こし、民間人を大量に殺傷するため、現在は行われなくなっています。当時は爆撃機の精度が悪く、特定の建物を攻撃するような手段がとれず、地域を指定して爆撃を命じました。現在は、ピンポイント爆撃が可能になり、軍事目標を直接狙うことが可能になっています。しかし、軍事攻撃は軍事目標を直接狙うことが前提で、都市爆撃は代替策として選択されたものだったと認識されています。それを主な手法として行えというドーリー中佐の提案に、中堅幹部である生徒たちが反発したのは当然でしょう。

 こんな無差別爆撃はイスラム全体だけでなく、その他のアメリカの同盟国の反発を招き、世界をさらに混乱に陥れるだけです。

 米軍がすでにあらゆる教材の見直しという大々的な対策に乗り出したことは幸いです。こういう動きが見られる間は、アメリカも大丈夫だろうとは思いますが、時々、ドーリー中佐みたいな人物が現れるのも間違いのないことなのです。特に、これがイスラム教と敵対するキリスト教的価値観から出ている場合、アメリカには共感者が多い可能性も考えられ、危険度はさらに増します。



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