専門家は北朝鮮のロケット技術を疑問視

2012.4.19


 military.comによれば、北朝鮮の失敗したロケット打ち上げを調査中のアナリストは、平壌が3年前の失敗した試みから宇宙飛行について少ししか学ばなかったらしく、アメリカを長距離ミサイルで脅かすには道は遠いと言います。

 専門家は北朝鮮が日曜日の軍事パレードで見せた新型らしきミサイルは何の進展も示さないとも言い、一部はトラックの方に興味を示しました。

 アナリストは1段機体が原因とみられる金曜日の失敗は、北朝鮮が失敗から学んでいないことを示すと言いました。1998年、2006年、2009年に打ち上げられた銀河ロケットはすべてが失敗に終わったと考えられています。「明白な結論は彼らには大きな信頼性の問題があるということです」とスタンフォード大学の「国際安全保障・協調センター」のニール・ハンセン(Neil Hansen)は言いました。「これは2006年7月4日以降に飛行の初期で故障した2番目の銀河ロケットの1段機体であり、これが銀河3号です。銀河ロケットの技術は少なくとも1段機体については、2000年代初期に止まったように見えます」。ハンセンは2009年に打ち上げられたロケットと先週失敗したロケットとの最大の違いは、機体の上の「3」と書かれた塗装だったと言いました。

 「早期に失敗したという事実は、その技術がどの程度優れているかという疑問を呼び起こします」と「憂慮する科学者同盟(the Union of Concerned Scientists)」のデビッド・ライト(David Wright)は「ロケットは非常に複雑で、数十の内一つでも問題があれば失敗を引き起こすため、動かすために部品を手に入れるだけでは十分ではありません。すべてのシステムが機能しなければなりません。北朝鮮は明らかにまだそこまで行っていません」。

 ハンセンは、韓国が4億5,000万ドルかかったという、ロケットを組み立てて、新しい発射施設で燃料を注入する準備がスムーズに進み、すばやく完了したことは、少なくとも地上の専門家が増えたことを示すかも知れないと指摘しました。北朝鮮は5カ年計画でロケットを作り続けると発表しました。ハンセンは新しい施設の打ち上げ台が銀河3号よりも大きなロケットを建設するという主張を裏づけていると言いました。

 打ち上げの数ヶ月前、軍事アナリストは新しい、より大きなロケットが日曜日の軍事パレードで展示されるかも知れないと推測していました。専門家は新型ミサイルがあまり印象的ではなかったと言います。「それはICBMであるには小さすぎるように思われます」とライトは言いました。「さらに、それは異様な構造であるように見え、それが北朝鮮の設計能力について何を言うのかは不明確です。我々はすぐにもっと多くのことを知るかも知れません」。

 他の専門家は新型ミサイルに当惑していると言いました。ミサイルは迷彩色の緑色に塗られ、パレードの最も最後の方で展示され、それは北朝鮮が最も気を惹きたかった兵器であったことを示しました。より多くの関心はおそらくはミサイルを積んだ車両でした。16個の車輪を持ち、それは北朝鮮が示した物で最大でした。見つけて破壊するのを難しくする機動性があるという点で、こうした車両は異なる場所で打ち上げるミサイルを運べるので重要です。より大きな車両はより大きなミサイルを運べます。

 「IHS Jane's Defence Weekly」のテッド・パーソンズ(Ted Parsons)は、日曜日に使われた車両は中国航天科技集団公司が設計した車両に酷似していると言いました。ハンセンはロシアとベラルーシの車両にも似ていると言いました。

 また、読売新聞が訪朝した日本人の証言を掲載し、その中に興味を惹くものがありました。最福寺(鹿児島県)の池口恵観法主らは12日にミサイル管制室に招かれ、当局者から「発射した様子はあとでDVDで公開する。それでミサイルか人工衛星かを判断してほしい」と言われました。


 記事は一部省略して紹介しました。

 テポドン2号の1段機体については、10〜20cm直径が大きくなったという専門家がいます。2009年に軌道投入に失敗したので、ロケットを大きくする改良が行われたというわけです。これは映像からの計測データに基づいていて、本当に機体の直径が増えたかは、私には確証がありません。3段機体の全長が短くなったという人もいますが、私には短くなったのはペイロード部分だけのように思えます。

 もし、1段機体を改造したとすれば、それは燃料と酸化剤のタンクを大きくしたことを意味します。新型エンジンを3年間で開発したとは考えにくいものがあります。北朝鮮がやっているのはロシアのロケット技術の使い回しであり、自らエンジンをすべて設計するほどの技術はないと思われますから、単に燃焼剤を増やすことで対処したと考える方が簡単です。エンジン試験場はありますが、既存のエンジンの改良版を大気中で燃焼させるテストをするだけでしょう。日本は真空中でのエンジンの動作を試験できる施設を持っており、北朝鮮の試験場は初歩的なものです。北朝鮮に技術があれば、2009年に動作した1段機体はそのまま用い、中国のロケットでも使われている補助ブースターを1段機体に取り付けたでしょう。しかし、そういう新しいエンジンを製造する能力がないのです。

 燃焼剤のタンクを大きくしたとすれば、機体の重量はさらに重くなり、エンジンの推力が不足する危険が生じます。さらに、機体の振動のような思わぬ問題が起きるかも知れません。2009年の打ち上げで一応は機能した1段機体をここまで改造することで、別の問題が生じたのが今回の失敗の原因でしょう。

 国際社会としては、北朝鮮が1段機体で悩んでいる時間が長いほど喜ばしいことになります。しかし、もっと近い韓国は、1段機体の欠陥により、自国内にロケットが墜落してくる危険があります。その点、日本は1段機体が燃え尽きて、2段機体がかなり燃料を燃やした後に上空を通過するので、危険はほとんどありません。

 読売新聞の記事からは、北朝鮮が来賓にDVDでテポドン2号打ち上げを知らせるつもりだったことが分かります。マスコミに対しても同じ方法を使うつもりだったのかも知れません。

 金正日生誕百年に打ち上げると期限を切ったために、技術が未完成のまま打ち上げが強行された可能性があります。自信がないなら、打ち上げは非公開にすべきですが、記念すべき日なので世界に公開するという方向で話が進んだ可能性があります。



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