13日午後の情報によるテポドン2号打ち上げの解析

2012.4.13


 墜落の詳細は情報が混乱気味で、その後に出てきた情報により、初期の見解を修正する必要が出てきました。

 朝鮮日報は、韓国軍幹部の話として、「1段機体と2段機体が分離せず、数分後にいくつかに分かれ、落下したようだと語った」と報じました。同幹部は残骸が韓国西海岸の全羅北道群山市の西190~200kmの海上に落下したとみられ1段機体と2段機体が分離しないまま、そこまで飛行したします。

 またNHKは、九州大学の八坂哲雄名誉教授が、ロケット1段機体のエンジン付近に故障が発生し、北朝鮮が自ら爆破させた可能性があると報じたとも書きました。

 中央日報は、シン・ウォンシク政策企画官が「北朝鮮のロケットは発射後に飛行し、ペクリョン島上空151km地点で落下を始め、本体と推進体は20余りの破片に分離して、平沢(ピョンテク)と群山(クンサン)西側100~150km地点の公海上に墜落したと報じました。


 1段機体と2段機体が分離しないまま落下したのと、20個程度の破片になったのが、いずれも真実ならば、1段機体から上だけが20個近くの破片に分解したということです。この情報は重要です。

 改めて1段機体と2段機体の切り離し失敗が浮上してきました。というのは、機体が落下を始めたペクリョン島上空は、まさに1段機体の切り離し点だからです。燃料を使い切り、噴射を終えた1段機体を切り離せず、テポドン2号は推進力を失って落下を始めたのかも知れません。姿勢も許容範囲を過ぎ、3段機体とペイロードが2段機体かは破断したのかも知れません。この分解が始まったタイミングと高度を知りたいところです。切り離し失敗が分解を招いたのか、分解したために切り離しが失敗したのかは目下のところ不明です。また、大気が濃い高度まで落ちて空気圧で壊れたのか、慣性力による自壊や自爆による破壊かを推定したいからです。12日に掲載したGoogle Earthのkmzファイルを参照し、島の位置を確認してください(該当記事はこちら)。これを見れば、墜落の状況を立体的に理解できます。

 自爆説は否定されたと言えるかも知れません。自爆ならば、1段機体と2段がくっついたまま落下するとは思えません。もっとも、自爆装置が作動しなかったとか、操作員がパニック状態でボタンを押せなかった可能性もあります。

 さらに、群山と平沢の西方海上に落下したと言うのは、1段機体が2段機体を抱えた状態で、所定の落下点の少し手前まで飛んだことを意味します。これもGoogle Earthで確認できます。1段機体のエンジン燃焼は正常だったようです。落下位置は北朝鮮が指定した警告区域を外れたと想像され、さらに陸地に近かったことは、韓国をかなり刺激したはずです。 日本と韓国では地勢が違い、韓国の危険度の方が数段高いことを認識しなければなりません。1段機体の異常による分解か、切り離し失敗による分解か。原因はこのいずれかではないかと考えます。現在のところ、後者の方が可能性が高そうです。

 ところで、海上自衛隊のイージス艦が20個の破片を4個と誤認した訳はありません。ほぼ同じイージス・システムを使っているのですから、探知結果はほぼ同じはずです。発表の際に数字を大ざっぱにするのは防衛省の習慣です。

 たとえば、打ち上げ時刻は防衛省は7時40分、韓国国防省は7時39分と発表しています。防衛省は探知精度を秘匿するために、以前からイージス艦の探知情報を5分単位で発表しています。しかし、ロケットの専門家は普通、分単位でレポートを書くものなので、イージス艦にそれだけの探知精度があることは常識として広まっています。防衛省が5分単位で書く努力をしても意味はありません。第一、こんな不正確な情報しか出さないのなら、防衛省の情報は無視して、他の情報源を参照するしかありません。福島第1原発の事故みたいに、外国の情報の方が的確で、早いという問題と同じです。これでは困るのです。

 以上の見解は今後明らかになる情報により、修正されることがありますので、ご注意ください。



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