ロケット落下地点について日本政府に通告

2012.4.10
追加 2012.4.11 0:40


 10日の夜になっても、ロケットの落下区域について、どこの報道機関も報じませんでした。

 私としては、こういう事実を放置すべきではないと思うので、政権党である民主党や各省庁に通告すべきと考えました。民主党には民主党ホームページから、文部科学省、国土交通省、防衛省には総務省「イーガブ」経由で以下の文章(太字部分)を送信しました。政府がどう対応するかは知りませんが、私としてはやるべきことをやったつもりです。

日本政府・民主党関係各位

 北朝鮮が4月12〜16日に打ち上げるとしているロケットについて、北朝鮮が国際航空情報機関(NOTAM)に通告したロケットの機体落下区域について、専門家の間では大きな矛盾があるとの指摘が出ていることを知りました。私はこれを10日朝に、自分のホームページに掲載したのですが、夜間になっても、どの報道機関も報じていません。このため航空機などに危険が生じる恐れがあると考えて、政府関係組織に通告することにしました。

 私と親交があるアメリカの軍事シンクタンク「Global Security」の研究員、チャールズ・ビック氏(Charles P. Vick)の最新レポートの中に、テッド・モルザン氏(Ted Molczan)の見解が引用されており、国際航空情報機関(NOTAM)が公表しているロケット機体の落下区域と想定されるロケットの軌道には矛盾があると指摘しています。ビック氏はこの見解を支持しています。

 光明星3号を東倉里の発射基地(39.660107N 124.705203E)から高度500kmの太陽同期軌道に打ち上げる場合、軌道傾斜角は97.42度になるはずであり、そのために設定すべき打ち上げの方位は192.3度ですが、北朝鮮が2段機体が落ちると予告したエリアの東西の中間点の方位は181.0度でした。これはあまりにもかけ離れているとモルザン氏は指摘し、実際の落下予想区域を下記のように予測しています。

 1段機体 35-12-25N 123-42E 35-12-13N 123-20E 35-55-20N 123-33E 35-55-10N 123-51E
 2段機体 15-08-19N 119-38E 15-09-35N 118-56E 19-24-32N 119-43E 19-23-08N 120-34E

 簡単に言えば、実際の軌道はもっと西寄りになり、中国の上海沿岸、台湾の上空、フィリピンの西海岸を通る形になります。4月10日朝のテレビニュースでは、航空機は予定落下地点の西側へルートを迂回する予定とのことですが、落下予想区域が西にずれることから、この迂回は危険を増す可能性があり、再検討が必要と思われます。

 私は少なくとも次の三省庁に対応が必要と考えます。

 文部科学省においては、直ちにJAXAにこの問題の真偽と影響を検討させるべきです。国土交通省においては、その結論に基づいて航空各社に状況の通告を行うべきです。防衛省においては、適正にロケットの弾道を観測するためにイージス艦の配置を再検討すべきです。

 関係各位においては、この問題を軽視することなく、適正なる対処を行うことを強く要望致します。なお、関係のあるリンクは以下の通りですので、ご参照ください。

当方のホームページの該当記事
http://spikemilrev.com/news/2012/4/10-1.html

チャールズ・ビック氏のレポート
http://www.globalsecurity.org/wmd/world/dprk/td-2-3rd-flighttest.htm


 どうも、もやもやして眠れないので、さらに考えてみました。

 北朝鮮が発表したロケットの軌道は、周辺国への領空侵犯の恐れが最小限になるように設定したに過ぎないのかも知れません。政治的な理由で決められたものかも知れません。しかし、それならば、その軌道と矛盾しない軌道傾斜角(97.42度)を発表すればよいように思われます。ロケットの専門家が検討すれば、すぐに嘘が露見する程度の話でしかないからです。そこに何か理由があるのかも知れませんが、今のところは分かりません。あるいは、本気でこの数字(88.7度)で間違いがないと思っているのかも知れません。まさか、わざと間違えて、北朝鮮の技術が脅威にならないことを暗にほのめかしているということは……ないでしょうね。何か気がついたら書きますが、今のところは何も思いつけません。

 しかし、いずれにしても、これでは世界に対する技術的デモンストレーションにはならず、北朝鮮自身の技術研鑽にもなりません。残る可能性は、やはり金正日生誕百周年のための壮大な打ち上げ花火であり、国民をそれによって騙すことで統率を図るためということです。この推測が当たっているのなら、北朝鮮はほとんど末期状態です。

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