北朝鮮が衛星打ち上げに他国を招待

2012.3.18


 北朝鮮の朝鮮中央通信は、来月の人工衛星打ち上げに、他国の権威ある宇宙科学技術部門の専門家や記者たちを招待し、西海衛星発射場と衛星管制総合指揮場などを見学させ、発射の状況を見せると発表しました。


 残念なことに、日本よりも北朝鮮の方が一枚上手です。科学者やマスコミを招待することで、科学実験の印象を強めようとしています。科学実験に対して、軍事的手法で対応する日本を貶めようとする意図があります。

 日本の対応は、日ロ戦争時にバルチック艦隊が対馬海峡を通過しようとした時、ヒステリックを示したのと酷似しています。上空を北朝鮮のロケットが通過することが許せないだけで、意味のない対策に大金を投じる気になるようでは、もっとストレスの強い軍事的圧力に直面した時、どんな誤った対応をするか分かったものではありません。

 そんなことよりも大事なのは、北朝鮮の意図をどう解釈するかでしょう。やっとアメリカから食糧が得られそうになった時に、それをひっくり返したことに、どんな計算が潜んでいるのかを考えてみることです。

 北朝鮮は、アメリカからの食糧援助がなくてもやっていけると判断したから、ロケットを打ち上げることになったのでしょう。考えてみると、北朝鮮には通常戦力では米韓に打ち勝てません。まともに競い合うことは無理であり、だからこそ延坪島をゲリラ的に砲撃して見せたのです。他に、正面切って戦わずに優位性を見せつけられる分野といえば、ロケットだということになります。どの国にも打ち上げを阻止する力はありません。迎撃は運がよければ当たるという程度のものでしかなく、今回は南方に向けてロケットを打ち上げるので、日本本土に落下する危険はほとんどなく、迎撃の機会は得られないでしょう。北朝鮮は邪魔されることなく、国威発揚が行えるわけです。食糧援助が不要になった理由は分かりません。中国が何かを約束したのかも知れませんし、他の国から協力が得られたのかも知れません。例によって、CIAはそれを察知できていないのでしょう。

 状況を知るためには現地に行くしかありません。北朝鮮が公開すると言っているのなら、こっそり遠くから撮る必要はありません。日本のマスコミは取材を申し込んでみるべきです。


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