弾道ミサイルへの対処を誤る日本

2012.3.17


 読売新聞が北朝鮮のロケット打ち上げ宣言への日本政府の対応を報じましたが、その内容に問題があります。

 「国連安全保障理事会決議に違反するとして、米国、韓国、中国と連携して中止を求める方針」は問題ありません。

 「ただ、発射の可能性は高いと見ており」という部分は戴けません。打ち上げは可能性という段階を超えていて、間違いなく行われると見るべきです。国民に向けて宣言したことを、実行しない訳には行きません。交渉の材料にも使うとは思えません。発表した以上は、打ち上げの映像を国営テレビで放送する必要があります。

 「日本に向けて飛来した場合はミサイル防衛(MD)システムで迎撃するため、自衛隊法に基づく『破壊措置命令』を自衛隊に発令する方向で検討に入った」は、昨日も書いたように無用です。今回はどこに迎撃ミサイルを展開するのでしょうか?。昨日の報道ではPAC-3と書かれていましたが、地上に展開するPAC-3は南に打ち上げる場合はほぼ無用です。それでも、政治の中枢を守るとの名目で首都圏に配備するかも知れません。それはPAC-3が国民全体を守る兵器ではないことを露呈します。それでも、それに気がつく国民は少ないかも知れません。イージス艦に載せたSM-3を展開することは可能ですが、これも過剰反応にしか見えません。テポドン2号は軍事用としては打ち上げに時間がかかりすぎ、発射前に巡航ミサイルなどで容易に破壊できるからです。

 テポドン1号のショックに始まった日本の弾道ミサイル対策の間違いは、すでに修正できない段階に来ており、有効な戦略を考案できなくなっているのです。先日書いたように、弾道ミサイル対策に情報収集衛星を打ち上げたのは間違いでしたし、宇宙空間に上がったかも知れないロケットを迎撃するという発想も国際法上の問題があります。沖縄と石垣島の間を通過したとしても、高度はかなり高いはずです。

 外交的圧力、イージス艦での弾道解析、海中に落下したロケットのサルベージを韓国に働きかけるなど、できることから着手すべきです。

 なお、今回は飛んでいくテポドンをカメラで撮影できる可能性がかなりあります。中国が取材を認めるかは分かりませんが、中国海岸から東倉洞までの距離は50kmくらいです。この距離でも光の点が飛んでいくのは撮れます。距離は遠いものの、韓国で取材することもできるでしょう。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.