北朝鮮が来月、人工衛星ロケット発射か

2012.3.16
追加 同日 18:50


 北朝鮮の朝鮮宇宙空間技術委員会が今日、「4月12日から16日の間に実用衛星を打ち上げる」との発表を行いました。西海衛星発射場から「地球観測衛星」を打ち上げるということです。

 今回の打ち上げは東海岸の舞水端里(ムスダンリ)の発射基地(kmzファイルはこちら)ではなく、西海岸の東倉洞(トンチャンドン)の基地(kmzファイルはこちら)で行います。その理由については、以前にも解説してきましたが、もう一度復習をしておきましょう。

 東倉洞基地はすでに完成しているとみられます。舞水端里から打ち上げると、日本上空を通過するために日本が大騒ぎをする上、アメリカとの関係も悪化します。舞水端里基地は東に向けて打ち上げて静止衛星を軌道にあげる役割を持っています。 ここから南に打ち上げると日本の九州上空を通過することになり、やはり日本は大騒ぎするでしょう。

 2009年4月の打ち上げでは、日本は迎撃態勢を取りました。これは軍事的には無意味で過剰な反応だったのですが、日本国民はそれを受け入れたようでした。私は打ち上げ前に日本海に落下したテポドンの機体を回収すると宣言すべきだと主張し、民主党議員の中にはそれを国会で主張した人もいました。結局、自民党政権はそれを行わず、有益な圧力の手段を放棄してしまいました。私に言わせると、「迎撃」は不要で、「機体の回収」こそ必要なことでした。

 「地球観測衛星」は極軌道衛星で北極と南極の間を周回する人口衛星です。これは低軌道で地球を観察するのに適した性能を持ちます。だから、東倉洞基地から韓国の領域をかすめるように南に向けて打ち上げるのです。ロケットは済州島の西を通過し、韓国は大いに不満でしょうが、北朝鮮はギリギリ問題ないと考えるでしょう。これに成功したと宣伝することにより、北朝鮮は偵察衛星を打ち上げられる能力を世界に誇示できます。

 使用するロケットはテポドン2号かその改良型と考えられます。テポドン2号は機体を余計に製造して、保管してあるという情報もあります。成功するかどうかは不明です。テポドン2号は2回しか打ち上げが行われておらず、曲がりなりにも飛んだのは1回だけです。衛星を軌道投入できたという証拠もありません。北朝鮮にとっては、ロケットの打ち上げ成功は衛星の軌道投入成功と同じことであるのは、過去の事例から明らかです。しかし、ロケット工学の常識として、ロケットの打ち上げ成功率は実績のある機体でも90%程度で、20回程度の打ち上げの後にその成否が安定するといわれます。テポドン2号がまだヨチヨチ歩きの段階にあることは言を待ちません。

 多分、日本は「今回は日本上空を飛ばないから大丈夫」という誤った判断をするでしょう。政治もマスコミも似たような反応を示すはずです。しかし、北朝鮮がロケット技術の向上に成功することは、日本にとって好ましくないことなのです。よって、今回の打ち上げの危険度は2006年と2009年の時と同じなのです。

 なお、TBS系ニュースが日本政府関係者の話として、「地対空ミサイルPAC-3による迎撃もあり得る」としていると報じました。しかし、上に説明したとおり、日本上空は通らないので、迎撃の必要性はないでしょう。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.