米兵がアフガン人16人を殺害

2012.3.12


 国内でも報道されていますが、アフガニスタンのカンダハル州(Kandahar province)で米兵が乱射事件を起こし、アフガン人16人が死亡しました。情報はまだ錯綜しているようですが、初期情報を押さえておく必要はあります。今後の続報にも注意していきます。

 BBCの記事から事件をまとめてみます。

 事件が起きたのはパンジャイ地区(Panjwai district)、アルコザイ村(Alkozai)とネジーバン村(Najeeban)で、米軍基地から500mの位置にありました。死者は16人(子供は9人)、負傷者は5人。一部の死体は火をつけられました。氏名不詳の兵士は軍曹と考えられ、事件後に基地に戻り、そこで逮捕されました。

 地元当局はこの兵士は午前3頃に基地を出たと言いますが、少なくとも1人の目撃者が彼が1時間早く襲撃したと言います。地元住民は深夜に航空機が頭上を通過するのを聞き、01:00〜01:30、時々、ヘリコプターと発砲音を聞きました。住民は政府とタリバンによって夜間の外出が禁止されています。女性の目撃者は02:00に発砲音を聞き、吠えた犬が発砲者に射殺されたと言いました。

 少数の目撃者は実際に攻撃者を目撃したようです。電話で攻撃についてカルザイ大統領と話したという15〜16歳の少年、ラヒウラ(Rafiullah)は、脚を撃たれ、夜中に米兵が彼の家に入ってきて、家族を起こして撃ち始めたと言いました。もう1人の目撃者、20歳のヤン・アグファ(Jan Agha)は発砲で父親と一緒に目覚め、カーテンを通して外を覗きました。突然、さらに発砲があって、首と顔に被弾して父親が死にました。さらに、母親と兄弟姉妹が殺されました。彼は床に横たわって死んだ振りをしたので生き残ったと言いました。彼も2人以上の米兵が家に入ったと考えています。「アメリカ人はしばらくの間、私の家の中に留まりました」「私はとても恐かったです」。

 サマド・カーン(Samad Khan)は、彼の子供と孫を含む家族11人が殺されたと言いました。攻撃が起きた時、村から離れていた彼は死体の上に化学薬品が注がれて、火をつけられたと考えています。写真は少なくとも子供1人が部分的に焼け、燃えさしの山が血痕が近くに見える家の床の上にあることを示します。死体の写真も少なくとも数人が頭部へ1発の弾丸を撃たれて死亡したことを示します。ある写真はこめかみの中央に弾痕がある赤と緑の服を着た小さな少女を示します。(事件に関する写真が載ったページはこちら

 NATO軍指揮官ジョン・R・アレン大将(Gen John R Allen)の声明は、攻撃を行った米軍隊員が拘束されたことを認めました。殺人の前の段階で、兵士は神経衰弱になっていたと考えられています。

 BBCの別の記事によると、犯人は2等軍曹(staff sergeant)で、3軒の家を襲撃しました。ネジーバン村の1軒の家では、11人が射殺されて発見され、そのいくつかは犯人が去った後で火をつけられていました。犬が撃ち殺されたと言った女性は、タリバンを5ヶ月間この地域で見ていないとつけ加えました。

 少なくとも3人の子供の犠牲者は頭部へ1発撃ち込まれて死亡していました。現場からの写真は、一部は明らかに幼児の死体が車の中の毛布の下に置かれているのを示しました。負傷したアフガン人5人はNATO軍の医療施設へ連れて行かれました。

 一部の情報源は、2人以上の兵士が攻撃に関与していると言い、タリバンの声明はアフガン軍が一役を担ったと主張しました。

 military.comには注目すべき事柄が書いてあります。アメリカとアフガンの地位協定により、この殺人事件から生じる起訴すべてはアメリカが行います。アフガンには一切裁判権がないのです。


 この事件は衝撃的で、アフガン戦略に与える影響が大きいとはいえ、これまでの対テロ戦の経緯を知っている者には、とうとう起きたかという印象しかないでしょう。

 先日、司法取引を経て有罪が確定したハディーサ事件にしても、先に武装勢力の攻撃があったとは言え、現地の家に押し入って大勢を殺害しています。今回はまったく理由のない殺人ですが、被害者にとっては加害者の都合など関係がない話です。イラクでは少女を強姦するために一家を皆殺しにした部隊もありました。

 狙撃部隊は自分の手柄にするためにテロリストではない地元民を射殺し、死体の一部を「証拠」として切り取り、保管するという異常ぶりを示してきました。

 兵士のストレスは増し、精神病を患う兵士が増え、対テロ戦前と比較して自殺率は80%増加したとの報告があったばかりです。軍の医療部隊は精神衛生に関して赤信号を鳴らし続けてきました。

 これらは明らかになった分だけの話であり、まだ目に見えていない部分がどれだけあるのかも分かりません。つまり、起きるべくして事件は起きたのです。この種の事件はすでに続発する可能性が高いレベルに来ていると考えます。



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