凱旋パレードはアフガン戦終了後?

2012.2.9


 military.comによれば、ニューヨーク市での凱旋パレードはアフガニスタン戦の終了後にという国防総省の見解をマイケル・ブルームバーグ市長(Mayor Michael Bloomberg)が支持しました。

 この見解は、イラクとアフガニスタンの帰還兵の団体「Iraq and Afghanistan Veterans of America」の創始者、ポール・リックホフ(Paul Rieckhoff)が変えようとしています。「我々はそれに挑戦して対処するために(ブルームバーグとの)会談を要請しています」「国中の人たちはこうしたパレードを欲しています。それは議論の余地はありません」。リックホフはニューヨーク市がスーパーボウルの優勝チーム、ジャイアンツの祝賀パレードをやりながら、イラク戦争の帰還兵のパレードを行わないのは間違ったメッセージを送ることになると言います。

 国防総省広報官、ダグ・ウィルソン(Doug Wilson)は、それを「論拠が間違っている」と呼びました。「これはパレードをやるスポーツチームの問題ではありません。帰還兵はそれをしません。大きな、国家的なパレードに適切な時期の問題なのです」。

 統合参謀本部議長、マーティン・デンプシー陸軍大将(Army Gen. Martin Dempsey)の広報官によると、国防総省は戦闘部隊が帰国した時が適切な時であると考えています。「我々にはまだアフガンの戦闘と支援活動に従事する大勢の隊員と民間人がいます」とデーブ・ラパン海兵大佐(Marine Col. Dave Lapan)は言いました。「イラク帰還兵を讃えるニューヨーク市での国家的パレードは、アフガンでの我々の努力を害しませんが、我々はそこで進行中の戦地派遣と戦闘活動を考えれば、現時点では不適切だと感じます」。

 しかし、リックホフは帰還兵には時間がないと言います。彼は、経済状況が依然厳しく、人々が職に関して不安を持ち、国家的パレードへの一般の支持が弱まるのを恐れます。「支援は続きそうになく、窓は閉ざされそうです」。

 他のニューヨーク当局者はこの考えを支持しました。市議会の少数の上級メンバーと退役軍人委員長は、2月2日に共同で声明を出し、米軍がイラクから撤退を開始したら、適切な時期にパレードを行うべきだと議会が2010年に合意したと言いました。「2012年はやるべき時です」と彼らは言いました。「我々の軍人のために、戦闘ではなく、祝賀のために連帯して立つために、両腕を広げ、通りを解放する最初の都市になりましょう」。パレードの提唱者でヴィンセント・イグナチオ市議(City Councilman Vincent Ignizio)の補佐官、ジョセフ・ボレッリ(Joseph Borelli)はMilitary.comに、ブルームバーグは説得できると言いました。「我々は彼が国防総省とホワイトハウスを助けているのだと考えます」と言いました。「(イラク)戦争に反対する人は大勢いますが、兵士を批判するのに熱心な人はいません」。


 本当に、こういう問題になると、なぜか人々は急に熱心になりますね。戦争の是非よりもパレードの話が盛り上がるのは、私には理解できないことです。

 この記事で、国防総省がパレードを行わないのではなく、時期を見ていることが分かりました。それは一つの分別だと思います。

 しかし、アフガンから大方の軍隊が引き揚げた時が戦争の終わりだと錯覚する人たちが増えるのは問題です。2003年に公開されたイラク戦を批判する論文(論文はこちら)の中で、過去の国家同士の戦争には明確な「始まり」と「終わり」があったけども、テロリズムとの戦いにはそれがないという指摘がありました。湾岸戦争なら、軍の大半が撤退した時点でパレードを行うのは適切ですが、進行中の戦いでは、やはり不適切なのです。それでも慣習を簡単に変えないのが軍隊なので、やはりパレードはやることになるのでしょう。

 大衆はこれで兵士への礼儀は尽くしたと錯覚し、なんとなく安心してしまい、イラク戦の問題を綺麗に忘れてしまいます。こうして戦争は「歴史」になり、その教訓はまたしても忘れられてしまうわけです。


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