NATO軍報告:タリバンが政権に復帰

2012.2.3


 military.comによれば、NATO軍の報告書は、レオン・パネッタ国防長官(Defense Secretary Leon Panetta)が予想するように、アメリカがアフガニスタンでの戦闘任務を終えると、タリバンが次の年に政権に復帰すると言います。

 「タリバン指揮官は兵士たちと共に、ますますアフガンの支配が不可避であると信じています」と報告書は言います。「タリバンは2011年に大変な苦難を経験しましたが、その戦力、動機、資金供給、戦術的な練度は損なわれないままです」と「State of the Taliban 2012」は言います。4,000人のタリバンとその他の捕虜に対する27,000件の尋問に基づく1月6日付けの報告書は、NATO軍高官のためにバグラム空軍基地で米陸軍によってまとめられました。

 報告書の漏洩は、水曜日にパネッタ長官が米軍が2013年中期に戦闘任務から手をひき、全軍が撤退する前に1年以上、訓練任務にシフトするという発表と同時でした。

 「多くのアフガン人はすでにタリバンが結果的に帰還することに準備をしています」と報告書は言いました。「アフガン政府は戦う意志を表明し続けますが、その要員の多くは密かに武装勢力と接触しようとして、タリバンの勝利が起きた場合に長期的な選択肢を模索しています」。

 NATO軍主導の連合軍の広報官は水曜日の漏洩した報告書を軽視し、NATO軍はタリバン拘留者の見解を正当なものとして受け入れる必要がないと言いました。

 米国務省広報官、ビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)は報告書は、11月26日にパキスタン軍兵士24人を殺した空爆の後で、パキスタンとの緊張した関係を修復するアメリカの努力を変えることはないと言いました。「それはタリバン拘留者が言ったことを現場で理解するのを助けることしか目的としていません」「だから、それはパキスタンを軌道に戻す我々の進行中の努力に影響を与えることはまったく目的としていません」。

 パキスタンの外務大臣、ヒナ・ラバニ・カー(Hina Rabbani Khar)は「古びたボトルよりもさらに古いワイン」として報告書を否定しました。彼女は記者に、パキスタンには隠された思惑はなく、武装グループを支援しておらず、外部の者ではなくアフガン人が行う限りはカブールとタリバンの和平交渉を指示すると言いました。

 タリバンは信頼醸成の措置が完了するまでは、和平交渉を始めないと言いました。タリバンはグアンタナモベイ基地の米軍刑務所に拘束されているタリバン高官5人の釈放を要求しています。オバマ政権はそれを検討していると言いました。タリバンは2009年にアフガンで誘拐したバウ・バグダール上等兵(Pfc. Bowe Bergdahl)を拘束しています。彼はイスラム武装政治グループに拘束される唯一の米兵です。


 タリバンの政権復帰は極めて可能性が高いと思っています。アメリカはそれを防げないのかというと、元々、ブッシュ政権は何の計画もなしにアフガン任務を増やしただけなので、最初から見通しはないのです。

 それを引き継いだオバマ政権にやる気がないのは当然で、むしろ、戦いを止めるために政権についた訳ですから、痛手にならない形で幕引きを図る以外に考えることはないわけです。

 NATO軍主導同盟軍と米国務省の広報官の談話は苦しい言い訳に過ぎません。捕虜の証言が重要なのは言うまでもなく、だからこそ、報告書が作られたのです。こうした内部用の報告書がリークされることも、NATO軍内部にも厭戦気分が広がっている証拠とみることもできます。

 カンダハルに同盟軍を増派したことで情勢は変わりませんでした。以前に,オバマ大統領はこの増派で軍人たちにアフガン作戦は無理だということを理解させ、撤退するという自分の方針を通すのだと書きましたが、やはりそういう筋書きに向かっています。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.